咲かないで
花にならないで
蕾をむしった
こんなんじゃ幸せになれない
愛のために涙を流すこと
強要されて首を横に振った
レッテルとバッシング
可哀想ねの同情に食べさせてもらった
青空から住宅街へ墜落する
おぞましい夢を見て飛び起きた
動揺したくないのに
助かりたいなんて思いたくもないのに
新世界の一日は唱和から始まる
声をそろえていると朗らかな気分で
悪くないかなと思い始めた頃
きみと出会った
おまえはまだ真っ当なの?
ぼくはここでは静かに暮らしたい
うそばかり
嘘じゃない本心だよ
脱出は三日目の夜
満月がてらてら光る夜だった
きみは星に祝福されて
ぼくはきみに祝福されて
目を覚ました
長い夢だった
おそらく幸せな夢だったろう
覚えていないことが何よりの証拠だ
きみが本当にいたのか
同じ世界にいたのかは
ぼくにだって分からない
きみにだって分からないんだろう
どうせ気配を消せやしないさ
会いに来たら目を覚まして迎えるよ
きみが迷子になったら手がかりとなるよう
ぼくはもう、白い蕾をむしったりしない。