ぼくを目覚めさせた雨とこれまで世界に流れた血とどちらがどれくらい多いだろう
格子窓からむこうの景色は届かないってだけで繋がっていること、三枚の羽根で冷やされた皮膚にくるまれて今朝もただしく鼓動と呼吸をしていた、 逃げ出した隣人のピアノの音がしずくみたいに鼓膜に降り積もっていつかあふれる
朝の時間は輪郭を奪われて蕩けていきそうだ
優しいきみはぼくを正気に戻したくなさそうに満ち足りていて、そんな愛と以前もどこかで触れあっていた気がするんだ
誰にも名前がない頃、ぼくを知るひとなんて当然まだどこにもいなくて空がまだ一滴の雨も落としたことがなくて、飽和寸前の頃とかに