no.201

板チョコを板のまま食べる喜びというのは確かにあってそれより大きな喜びなんて面倒くさいしそれを、それだけを至上だと思っていたい。電気ストーブ。片付けどきが分からなくなって膝を抱えている。骨。季節外れのおもちゃが壁に飾られていて感覚を疑う。舌。安易に不調をひけらかすことは本人のためにならない。インターネット上で見かけた水難事故。十年以上前の八月。ぼくが子供だったころ。あなたがぼくをまだ知らないころ。いくつかの家族がバラバラになって生存者はキーボードにかじりついている。画面で知る生い立ちと事件の経緯。慰めてくれるくらいなら忘れてください。河津桜、あなたの目元を隠す花吹雪。忘れてください。忘れてください。忘れてください。跡形もなくなるまで。ぼくの命は丈夫で少し寝ない食べないくらいでびくともしない。肌は張って瞳は昏く輝く。膜一枚隔てた世界であなたは解剖を続けてください。ぼくに未来を教えないで。

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