逃げ込む先を探していた。本当は誰より早く見つけたかった。秘密なんか守りたくなかった。懐かしいものになじられるのは御免だ。あんなに暑かったのに。あんなに眩しかったのに。夏はまた過ぎるんだ。当たり前に過ぎるんだ。かき壊した皮膚が涙を流す、無視されたくなかった。耳を傾けてくれれば、あなたそんなに苦しまなかったのに。違う。違う。違う。否定して肯定を待ってる。おまえはぼくの単なる皮膚、あくまで構成要素、の一つ、剥がれ落ちて再生するもの、脆い命を包むもの。生きていたくない。呟いたぼくを「そんなはずはないよ」と否定する。否定なのに肯定する。生きているとこんなちぐはぐにたまに会う。生きていたくないんだ。振り払うように繰り返すと、言葉は放棄により終わる。豊穣、ぬくもりの世界。いつか消えるからいまあたたかい生き物の魂。ぼくを拾うために何を捨てたの。意地の悪い質問に、いいや拾わせるために捨てたんだ。そう答えるおまえの、躊躇わないところ、いつか自分にも向けられる眼差しだと覚えておくよ。責めはしないよただ覚えておく。