No.840

不完全な暗闇のなか、あなたを見た。完全な暗闇にあるかのよう、手のひらで輪郭に触れた。だって、ほら、分からないでしょう?本当かどうかは。幻を見ているんじゃないと言えないから。青い目と赤い目を持ち、もう平気?と問いかける。からかっているのか、やめて欲しいということなのか。どれだけ一緒にいても心は読めない。わかっているんでしょうと言われ、あなたは、じゃあ、わかるのか。ぼくの抱くよこしまが、嘘が、見抜けるのか。(そんな優しい目をしないで)。許されていることに鈍感でいたかった。鈍感さはまたあなたに触れる言い訳になるから。この、不完全に透明で、しずかな、永遠に取り残された夜のようにいられるから。