no.176

朝、あなたのぼくに言う好きですは助けてに聴こえる。
夜、あなたは助けてと囁きながらぼくにきっと死なされたがっている。
壊したいのはこちらの何です、夢?
黒板の上に貼ってあった三行とそれに見合わない野菜たち。
同じ夜明けでもどうしてこんなに胸が痛いの。いまこの頬を転がったものはほんとうは誰の目が流したものだったの。
何故いつも匿名を選ぶの。
何を映して?
何に傷んで?
薄い月が地平線に触れるころ、あなたの手が同じ形の傷跡をぼくの首に残していく。
いつか消えるように。それをたったひとりで見届ける。いつか消えていくんだ。呪っても祈っても。そこに大差はない。あるとしたら騒ぎかたの違いだけ。
産まれる前に中断をした夢のつづき。
うまく呼吸できないくらいでまた産まれることはない。
あなたが行きたい場所に行けるために百人の命が必要だとする。
戦わせたくないのはどちらかが勝つからだよ。ぼくに守られたがっている、あなただってそれを思ってる。
綺麗なふりも汚いふりも、それを願いながらその真逆を自覚したことの無意識の証明、つまりほんとうは気づかれたがってる。そのくせ指摘されたくはないんだ。
支離滅裂じゃないか。何もかも。うんって頷かなくてもここでぼくが許してあげるからあなたはいつまでも責め立てておくといい。理由、理由、理由に思えるんだ。勝手な解釈でふざけたことをって思うんでしょう。裏切られたことは一度もない。切りつけられても何度でも抱き締めよう。ぼくはあなたの言うとおり愚かな人間であり、だから繰り返すことが得意なんだ。振り向いてくれなくていい。振り向かなくていい。ぼくはあなたの言うとおりだいたい平気な人間で、あなたの態度のそっけなさに対してもそれは変わらない事実なんだよ。