No.820

楽しいことなんてひとつもない。ひとっつもない。堪えようとしても結局漏れてしまう笑い声を手の甲で押さえてきみが言う。屋上に続く青春悲劇ゲーム。白いネズミと青いネコが階段を駆け上った。誘惑の初夏がすぐそこにある。僕らどちらも舐めずに傷を残してる。あなたのせいだ、おまえのせいだ。いつか大人になるんだって。絶対なんだってさ。嘘みたい。嘘なんだよ。嘘をほんとにする方法があるよ。ここを飛び降りるんだ。簡単だろう?椅子から飛んだことがあるし、机から飛んだことがある。同じことだ。美しい形では残らないけど、どこまでも飛んでいけるよ。やってみる?しない。しなくて大丈夫?しないから大丈夫。コンビニで買った練乳パンを無駄にしたくない。払った180円を無駄したくないんだ。時間や命は無責任だよ。僕たちにはまだ見えない概念。柔らかい肌は大怪我をしない。未来ある生き物は何も粗末にしない。僕たちはお互いを隣に感じながら新商品を若く頬張る。振り返ってもこの今はいつまでも永遠になろう。