No.817

私がここにいることが、誰かの孤独を慰める。私がここにいることが、誰かの自虐をやわらげるなら。言わないで。続きを言わないで。きみは僕の否定を待ってる。優しいんだね、信じてくれるんだね、僕がもしかすると人へ優しくできるかも、って。傷跡を見せ物にするのは終わりにしよう。二人で決めたルールは責任が分散され、一度も守られなかった。破るためだよ。裏切るためだよ。予測のつかない無数の淡い白も、やがて春のうちに終わる。僕らの人生、最初と最後を見届ける人がいるものだと、子どものように信じてる。大丈夫、ほら、もう大丈夫と言い合って。平和だねと頷き合って。狭めた視界で。でも、ああ、僕はそれを好きだったのに。花弁が浮かんで鏡だと思い知る。誰もいなかったと、ここには僕だけだったと、薄暮に包まれ思い出す。途方もなく静かな嵐。なけなしの沈黙のなかに恋は死ぬ。ぼくの世界できみはずっと不在だった。記憶だけが見つめていた。