No.811

笑い話であればいいのに
鏡のなかの誰かに笑いかけた
他に誰もいないので
ぼくがぼくを殺していた

ひとつ嘘をついた
嘘をつかれてだまされていた
と思っていたあの人は
ぼくにも嘘をついていた

花になれたらいいね
枯れて落ちても責められない
かと言って誰も誰をも責めていない
どこまでもひとりよがりの世界

やさしくなりたかった
強くないとできなかった
子どものまま放置された柔らかさが
あなたを許したり追い詰めたりした

潔癖な恋をしているあいだ
いつもいつでも不安だったよ
どこか汚れてしまったのではないか
どこか千切れてしまったのではないかと

汚れてたよ
もう汚れていないところのないくらい
千切れていいよ
千切って大切なものをまた集める

きいろいあぜ道あおい空
答えのない謎謎を持って
あなたに会うため歩いてる
あなたを知るため生きている