No.801

猫は気まぐれで愛をつぶやく
咲かなかった花を柔らかく踏んで
きみの歌声はよく馴染む
残酷であたたかいこの光景には特に

そう感じているということなんだろう
そう覚えているということなんだろう
誰もいないなら生きられないよ誰も
軽く言い切ったきみを睨んでいたぼくの春

今も歌っていて欲しい
今もひとりで歌っていて欲しい
自分に向けられなかったものに
引き寄せられる人がこの星にいるから

サイダーは線路に流れ出した
炭酸と星に大差はないんだって
あの日ぼくはきみから愛を教わった
伝えなかったけど初めて満たされたんだ

今もきみがどこかで歌っていて
あの日のぼくを救い続けてくれますように
今もきみはギターを弾いていて
隣にいる誰かをあたためているだろう

踏まれた花は何食わぬ顔で明日咲くよ
遠くのきみに光が降るよ
ぼくがそれを見ている
濃密な平和が公園のブランコに溶け込んでいく時