あなたは優しいねときみは言う。大丈夫か。きみは、だいじょうぶか。そんなに人を見る力がなくてこれからも生きていけるのか。
変わらずに。曲げられずに。傷つかずに。傷つけずに。
ぼくの言動がぼくの本心から出ているものだと考えてはいけない。見張っているのだから。どう猛な獣が牙を剥かないよう。見張っているのだ。我を忘れないよう。もう二度と。
ちょうちょを好きか。晴れた日の雲ひとつない空や、新品のノートブックが。好きだと言う、きみもぼくには等しいんだ。等しい。それらと。新しくて消えやすいもの。
疑って欲しくないなときみは怒る。そうか、きみは、怒ることもできる。ぼくは静かに感動をする。
ちょうちょ?ずっといるよ。
雲のない空?ずっとあるよ。
あなたがいるなら。
ノートブックに書き留めなくても言葉はあるよ。
あなたが聴くなら。
きみは言う。呪いのように甘いセリフだ。いや、どんな呪いだってここまで甘くはない。じゃあこれはなんだろう。そうやってきみはぼくの心に住み着くことに成功し続ける。今日も。昨日も。あさっても。ちょうちょも空もノートブックも使わずに。ぼくに生きる理由が何かを教える。
「月も星も遠すぎたね、あなたには私がいるよ、もう大丈夫」。
死なない理由が何かを教える。