No.774

月は空砲で撃ち落とされ、愛より重い夜が来る。明けることのない、信じたい、育って欲しくない、朝ではない夜が。黒と青が幻覚を飲み込むんだ。殺さずにとっておくの。ページをめくる手がさっきから進まなくて、ああ、またあの人を考えている。あなたにとっての星はひとつきりで、見えなくなったら何もないんだ。空気を読みながら語りかける。読めているかは分からないけれど、経験からくる確率としては、きっと正解であるはず。これが正解なら美しいはず。思うんだ。祈るんだ。願うんだ。乞うんだ。あなたは僕を見て「かわいそうに」それだけを言うと、自分の言葉が本当になるよう、ちゃんと僕を壊した。鉄屑になったぼくは無数のあなたを抱えて星になるかも知れない。無数のあなたの中のどれかひとつくらいは、くらい夜から脱出できたかも知れない。