no.154

見違えるような新しい朝、疑いもなくおはようございます。を言う朝に、昨夜の二人はどこかへ消えて床に落とした絵本は跡形もない。通じない言葉、翻る掌、影絵の中でだけ縄をすり抜ける体の一部。神様と呼ぶのは可笑しい。そこにいるのならいちいち呼ばないだろう。何度別の角を曲がっても君の背中に辿り着いてしまう、坂の多い街。人の営みに関わる輝きのすべて空に昇って誰にも探されないありかを指し示している。透明ばかりで胸焼けしそう、野良猫の鳴き声も君のでたらめも分厚い辞書も等しくくだらなくてかけがえがない。窓から放り投げたら次は何に生まれ変わろう。あんなにも委ねた表情をしなければ今頃どこにいなくてもよかったのにね。首を絞めたときに。心臓を撃った時に。川へ沈めた時に。呼吸を塞いでおやすみなさいを言った朝に。

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