No.737

蜘蛛の巣、星座、ひたいの印
在か不在かに苛まれている
おまえの背中に見えた羽が
恋は異形だと丁寧に教える

落ちてはいけない
足元は宝石でできている
選ばれてぼくはここに立っている
だから簡単に落ちてはいけない

禁じれば禁じるほど
忘れようとすればするほど
鮮やかになり匂い立つ
よほど現実のほうが生温い

選ばれた?それは、誰に?
ひたいに手をあて印を隠す
目の前には平凡な人間が映る鏡が立つ
昏い瞳に光が灯るのを待ちぼくは立つ

選ばれたいんじゃない
選びたいんだ、いつも
間違いかも?そうかな?
運命じゃないかも?そうかもな

終わらない始まりは飽和したんだ
不燃性もろとも屑になってしまうだろう
ぼくは終わるものとして生まれたい
流れる星とぶつかってでも

雨粒のかわりに宝石が降る
後世に語り継がれる一日となったその日
誰もがこぞって天へ向け手を伸ばしたその時
ひとり俯いていたおまえだけがぼくを見つける

『天使の失墜』