No.723

生ぬるいものに生かされている。
たとえば明け方のシーツ、手探りで探し当てた端末のあたたかさ。
産まれる前みたいな、これとだけ生きてみたいな。
脱ぎ捨てたシャツにいずれ消える体温が今はまだ残っている。

きみが料理なら食べるのに、消えてかないよう内側に入れてしまうのに(消化されてぼくになればいいのに)。

前髪を切りそろえるように平熱にそろえて、高いだの低いだので別れていく、離していく、捨て去っていく、平気でいる。

ぼくは目で警告をする。
仲直りしたくてきみを傷つけることがあるよ。
ぼくは態度で伝言をする。
治療したくてきみを壊すことがあるよ。

(きこえていた?)

でたらめに結びつける時間の中に潜んでいた疾患がきみと出会ったことで発散されて世界の色を変えて見せる。

バランスが分解されて欲しくもなかった平和を臓腑から吐き出す。

願うふりはしてもいいけど、だってそれに殺されるかも知れないでしょう?

どんなラベルがつけられていても抱いた時にどうあるかだ。

きみを守れない平和ならいらない、きみにさわれない命ならいらない。

深く潜って柔らかい青に叫びたい、
きれいなものが多過ぎるんだと、
そしてそれはぼくを翻弄して底へ落とそうとするんだと、

(落ちてもいい。底なんてないから。
もし底に見える場所があるなら、
私そこで手を広げて待っているから。)

そこへ落とそうとするんだと。