水の底から見上げてる
盗んだ折り紙が光るのを
かわいいねと言えなかった
それが欲しいと言えなかった
回想の順序は決まってる
たどりつく結末もわかってる
また水の底から見上げるんだ
手にできなかった光を見るんだ
帰り道がわからない
そんな嘘をついて道をそれた
視線の先であなたが立って
待っていたよとこちらへ告げる
星のにおいがしていた
迷子のあいだずっとだよ
ぼくの言葉すべてが
ほんとうではないけれど
ぼくの言葉すべてが
うそだというわけでもないんだ
嘘をつく人には守りたいものがある
失いたくないものが
黄色い花が咲いていたと思うんです
曲がり角のごみ捨て場に
それをあまり愛さないようにしよう
ぼくが触れたら花は枯れるので
自由の効かない手袋に
問題ばかりの手を詰め込んだ
もう来ないで
誰ももう近づかないでと
百年後の昼下がり
寝ているぼくのところへあなたがやって来て
なんなく手袋を取り去ってしまう
魔法なんて解けてただろうと笑いながら