No.703

雨があがった朝
カーテンを開けると世界が展開した
いつもの街並みが輝いていた
そうだ、遮光性の高いものに変えたんだった

勘違いのまま生きてきた
公園でにらみ合うカラスと猫
みょうに新しい鳥居や
同じ表札なんかを探して歩く

きみを中心に過ごしていると
ぼくを感じなくて済むから幸せなんだ
恋とか愛とか知らないけれど
ずっととか永遠とか恥ずかしいけど

変声期、ちいさな喉仏に宿るお姫様
心臓のすみっこで剣をふりかざす勇者様
一枚のガラスが割れる音がして
みんな光に溶けていったよ

ぼくはぼくで、でもそれがとても嫌で
たくさんの物語に埋もれてたんだ
解き放った物語の先にはきみがいる
手をのばしてみようと思わせた

繰り返す夜と朝
退屈だって言ってたい
退屈は平和の飽和で
割れた鏡でぼくは無数に分裂する

そのうちのどれかのぼくが
きっとひとりのぼくが
今を望んだんだ
のばさなければつなげなかった手