No.665

ガラスの廊下を歩いてる
透き通っているのに何も見えない
鳥が鳴いているのが聞こえる
産まれなかった赤ん坊かも

ぼくは自分を疑うことで
世界と和解をしようとした
でもその世界もぼくの創作で
ぼく以外なんてどこにもいない

張り出し窓で立ち止まる
目を凝らせば海が見えるよう
星の散る夜空が見えるよう
錯覚にしか描けない正常を求めて

交信のやり方が分からない
探そうともしない
ぼくはたぶん変化してる
比較する何もない

立ち止まった拍子に目の縁からこぼれるもの
産まれた時にこの体をまとっていた血の雫
汚れた手を浸した雪解け水
不完全でも物怖じせず歩き出せたあの頃

少しでもあたかかい思い出があって
救ってくれる気がして集めてた頃があって
今はそれが締め付けている
首筋や手首を締め付けている

戻れないなら記憶なんて要らない
捨てる自由はあったけどできなかった
なくしたふりした涙があふれて
初めて突き当たりにたどり着いた

再生は繰り返される
突き当たりに来ないと思い出せないんだ
でも今日は少し特別だから
突き当たりの先へ行ってみようかな

高いビルの屋上かも知れない
線路にかかった橋かも知れない
そんなの空想に過ぎなかった
覚醒したぼくを見て、あなたが甘く苦笑している