No.652

頭上にグラデーションの花を見た
あたたかいはずの温室で
風が吹き抜けるのを感じていた
ビニールに包まれていた僕の死体

とどまっても何もないよ
こんなところ
雲雀がそう話す
天国なんかじゃないんだから

雲も水も同じ輪っかを行ったり来たり
見覚えのある風景
いつかどこかで流れていた音楽
みんな飽きて出て行くんだ

でもすぐに忘れちゃう
つまりどこにも行きたくないんだ
存在をしたくないんだ
私だってそうなんだ、

手のひらに何かがすっぽり収まる感触

僕は目を覚ました
いつか繋がるけど今はぼやける太陽
覗き込むグラデーションの花
名前も知らない小鳥の死骸、だれ?

輪っか
天国
存在
つまりどこにも、どこにも

記憶がみるみる溶けていく
紅茶に落とした角砂糖みたいに
今となっては夢かもわからない
僕はこの温室を出て歩かなきゃ。