No.613

見つめてはいけない
ソーダ水越しにしか
指先で弾く恋のありさま
音にならずに飛んでいけ

文字を飲み込んだからだ
砂に書かれた思いの丈を
波がときどき攫うのは
海がときどき鳴くのは

ゼロに戻れるはずはない
聞いてしまった
話してしまった
秘密ならここにあるから

うまくいかない
なんにもない
ここにはなんにも
壁を超えてぼくを覗き込んでも

名前は呼ばない
振り返らずただすれ違ってよ
花束で目隠ししてあげる
ぼくのいない道を進めよ