No.552

明方に夢想する
これは誰かの夢じゃないかって
光を孕んだ
闇は静かに駆逐される

目に届くだけじゃない
あたためるために
太陽が昇って
なけなしの寂しさを拭う

遠いどこかで
あなたも見ているといい
分け隔てないこの空を
そして不自由に気づくといい

僕たちに与えられた程度に
真相は雲のように形を変えて
それぞれの感情も留まらないって
変わらないことを誠意と呼ばないで

僕が手放したもの
あなたが手放したくなかったもの
それだけで十分
本当はそれだけで十分なことなんだ

隠し事は川底から引き上げられる
かつて命だったものの形をして
大人になるなんてずっと先のことだった
僕たちは見つけて覗き込んだ

単なる死骸がどうしてあんなに
周りの風景を掠めるくらい
呼吸を忘れるくらい鮮やかだったろう?
かつて生きていたからだとは気づけない

夕日を照り返す五臓六腑
僕たちは言葉を分けた
通じるのに通じない
それよりは幾許かマシだろうと

日に縫い目などないように
変わりゆく僕たちにも嘘偽りがない
それほど高度になることはない
いつまで経っても覚束ない

死者ばかり美しいか
そんなわけはない
どちらからともなく始めた遊戯
生きている者にも手向けの花を

運命のように出会ったこと
忘れても染み付いている
こみ上げる涙は取っておく
百年後に来る再会のために