No.535

ぼくに届かせたいと
丁寧に噛み砕いた白い豆
あなたがぼくに見せたがった世界を
見たと嘘をつくくらい、わけはないんだ

あと七日しか生きられなくたって
今日と同じように過ごすだろう
今日のような明日を過ごすだろう
天才に飽きたあなたの遊びに付き合って

行く予定のなかった花火大会
もっと近くで見たかったのにな
ベランダに佇むあなたはまるで違う
そこから飛び降りたがっていたあなたとは

月は淡々と回転し季節を巻き取って行く
同じ一瞬は二度と来ないし
永遠に覚えてはいられないのに
ぼくたちは平気で歌とか歌う

ぼくたちは平気で次の物語を始める
そしてぼくたちは平気で立ち直る
これからも平気で死にたいし平気で生きたい
今のぼくたちなら、きっとそのとおりにできるだろう