no.72

この声は染みこんでもいい
この色は染めてきてもいい
目を閉じて耳をふさいで
この時のために無知で来たよ

きみが何かを語るとき
ぼくが何かを捨てるとき
ふたりは昨日朝方の肉片
魂は今日もレールに残っている

電柱に落書きされた神様が
真っ暗な瞳で真相を見ていた
だけど口は無いから告発しなかった
その瞬間切符越しに傷にふれた

行き先は霞んで消えそう
ぼくたちをどこへも連れて行かず
どこからも旅立たせることのなかった
冷たく硬い切符越しに初めてふれた

おはようの終わりに
はじめましての左で
さよならの続きとして
わざと違えたスペルの暗号

行き先を読み上げると切符は溶けて消えた
動いているものは流れ出した血ばかりの朝だ