No.513

勝手に持ち去ろうとしないでくれ。きみだけの世界じゃない。ぼくがいてぼく以外もいる。きみがいてきみ以外もいる。そうだろう?常軌を逸したふりをして何もかもに混沌を目論むのはやめてくれ。きみはもしかすると、じゅうぶんに優しいのだろう。そのせいで傷つきやすく、優しさと弱さは紙一重だと、たまに自分を呪っている。もっと無慈悲でないと辛いんだと。きみは意味を欲しがっている。無理もないことだ。現在のきみの考え方では、きみが生まれてきたことにはなんの意味もないんだから。ちょっとした、ミス。しかも、再現性のある。だけどほんとはそんなことない。きみがそう考えているだけ。勝手に。そして呪っているだけ。かんたんなことを難しくして。例えばぼくは適していると思う。少しずつでいいんだ、全部じゃなくてかまわないんだ、ぼくを助けると思ってくれないか。きみは今日からごはんをちゃんととる、夜が明ける前に眠りにつく、日に一日はあらたな発見をする、ぎこちなくても笑う、他人の言動の意味を推測する、憶測でいい、もちろん。夢は忘れてもいい、だけど思い出す日をつくる、誰かを憎んでもいい、だけどいつかは許して水に流す、嫉妬をしてもいい、そのかわりきみのすてきなところにも目を向ける、分からなくなったらぼくに訊ねてくれ、止められるまでやめない、たまにはひとりで泣いてもいい、ただし壊れる前にここへ戻ること。これを守るんだ。そうやってきみはぼくを守るんだよ。