no.434

君がいなくなって僕だけが残った意味を考える。この街がうしなったものについて。前と後で何か変わっただろうか。もったいぶって答えを先延ばしにしている?誰も気づかないマジックアワーも水たまりにうつる空も。のぞきこんだら君から背中を押されそうで、だから、しない。目を離したすきに読みかけの秘密が暴かれてしまう、すごろくの上で繰り広げられるインチキ合戦、にせものの三角形に心惑わされること。もう、無いなんて。夢みたいだ。とんでもない、夢みたいだね。もう一度雨が降っても君に呼び止められることがないなんて。悪口を言っても怒鳴られることがないなんて。どうせ消えてしまうのなら消してしまえばよかったな。それをしなかったら何がごほうびになるの?いつまでも踊っていたかっただけ。何も知らない夜に。明日のことを未来なんて呼びたくなかっただけ。明日はただの明日だ。僕にけだるい空腹を持ってくる。行き交う細胞は愚痴なんか言わない。君がきれいだねと言ったこの目は、もう誰にも褒めてもらえないだろう。睨んでいく。キャットフードを知らない猫みたいに。平気だって言う。ちっとも違っていても。明日は明日。今日は今日。血は今も赤い。蜜に濡れて重たいまつ毛で風向きを知る朝。わるくないだなんて、つまらない嘘をつく。

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