no.392

きみと別れた日のかえり道は空が暗い
余白のない黒
どこに何を書いても身元を知られることがなくて
ぼくは液体のように安心する
真っ白は脅迫に近いので
想像の中だけで生きたくて何度も離れようとしたのに
仮想の敵をつくりだして何度も殺されかけたのに
ぬいぐるみは命を欲しがらない
それが幸せと知っているからだよ
きみの選んだ扉は明日へと続く
警告を無視してまた始めるんだね
きみは自立した一つの塊だと
頭で分かっていても好きにしたいよ
怖いものがないから何階からだって飛べた頃
ぼくたちを前に進ませる何かが、
この世でうまく暮らせなかった、
化け物と呼ばれた、
だけど生きようとしたぶざまの末路で、
彼らの泣き声の圧力だったとしても
ぼくたちはわざと焦点をすげ替えてやり直そうとする
きみはぼくに言った
いつも遠い目をしてみているね
わからないだろう、
そう、ぼくにもきみが分からないんだ
それはときどき希望だよね
ばらばらの道を歩きながらふと思い出す
それはときどき希望だってことを。