no.335

まあいいか、しかたがないな。そう言って欲しい。パレードの帰り道。きらきらを避けて歩いた。星を殺さないように。ひとつひとつに命が宿っていると仮定して。ぼくたちさみしい大人になった。神童の影。いくつもの言い訳に守られて。黒い瞳が地平線を探してる。行けもしないどこかの話は尽きない。硬直した伝書鳩の亡骸。始まらなかった戦争。左手に提げたビニール袋の中の生暖かな劣情。後戻りできないよう共有した秘密がいつかふたりを引き裂いてしまうものだとしても。そのためにこの秘密は生まれたのだと言おう。他に方法はなかった。間違うことでしか前へ進めなかった。喝采が今も耳に残ってる。途方に暮れていることを隠さないことだけでつながっていられる。嘘だらけでも生きていけるのは虚しさを繕わなくていいから。廃線の駅が近づいてくる。どちらも何も言わないのに、そこを過ぎたらもう振り返ってはいけない。