no.420

あなたなぜ泣くんだろう。そんなもののために。ぼくは観察者のように冷静だよ。どんな感情もわくことはない。風を受けて歩くと前に進んでいること強く意識できる。だから抵抗はあったほうがいい。無いよりはいい。あなたが生まれた日あなたが泣いたことを喜んだたくさんの笑顔、まだ覚えているのかな。それでたまに泣いちゃうのかな。月の光でかためて口に入れてもちっとも味がわからない。できるだけ透明にして日に透かしても、ちっとも。何も感じなくなったぼくはなぜ人から見るとさみしく映るんだろう。そこには少しの誤解とすれ違いがあって、その二つが存在することで徹底的に別の生き物なんだね。どう祈ればいいんだろう。どう願えばいいんだろう。きみが泣きますように。きみが笑いますように。口にはしないけど。話しかけることはできないけど。黄色い花が咲く広場で、いくら待っても再会しないけど。忘れたいと考えますように。思い出したいと振り返りますように。その間だけ、きみは未来を忘れる。そのままきみを後ろへ押し戻そうとする微かな風に、いいえと前を向きますように。