No.768

雨雲の切れ間からバター色の光がさしている
映画ならあの光は兆しかもしれない
群像劇ならあの光はフラグかもしれない
ぼくは今日運命の相手と出会うのかも

日常に点を散りばめて線にするのをもったいぶった
時間は砂のように流れて光景をつくりかえてった
登場人物は変えないまま少しずつ少しずつ
ドラマチックはぼくの上を素通りした

どんな思いで気持ちを伝えてくれたんだろう
卒業式が終わった後のワンシーンを繰り返す
本当に桜が舞っていたのか、身長差は違わないか
もう分からないしそもそも捏造込みの回想だとしても

光はさしていた
今ぼくが何気なく見上げた空にあるような
光が確かにさしていた
特別じゃないもののような顔をして
今さら気づいたのとでも言いたげに

線は後から結ぶものなんだろう
点を散りばめたことはないんだろう
その証拠に振り返れば道だけがある
つないだ手からは光のように血が流れる
人が変わっても名前が変わっても