No.739

なかなか沈まない夕陽を見ながら果実酒を飲んでいたあなたは。

もういっかな、
ふと言ったんだ。
もう、そろそろ、いいかなあ。

(降参。だから、落ちてあげよう。)

星に言わせたようなものだった
駆け引きに勝利したというそのことが
ぼくの完全なる敗北で

恒星はつねに大きい
勝てない。
と、そう思ったけれど

振り返ったあなたがぼくだけを柔らかく見て
今までどれだけつらかっただろうかと思って
あんなに欲しかった唇は冷たくて
陰る視界に慄きながら口移しで星を受け取る

星は濡れており滑らかに食道を下り
おなかの中でしばらく脈動し
せり上がる望みと涙目のままにあなたを見る

仕方がないよ、ずっと好きだったんだ。

あなたはたぶん仕方なさそうに優しく笑った
あなたの目に映るぼくもそうなら良いのに
そうであるならどんなにか良いのに
これからはふたりだどこまでも落ちていこうね