No.715

何も変えられない
その思いに押しつぶされそうになって
いつもの散歩ルートを変えてみた
工事現場の脇を抜けて

難解か単純かの見極めができていない
同じ問題の前で立ち止まっては
回答を保留にしているんだ
この問いは難解か?単純か?

(そうじゃないだろう、)

どこまで差し伸べたら逃げられて
どこまで差し伸べたら感謝されるんだろう
考えるより先に体が動く
あいつみたいになれない、ぼくは無価値だ

ふと顔を上げてみると
貯水池に生えた草を滑って
光がぼくに伸びていた
さらさらと優しい顆粒が注がれた

脱ぎ捨てられた片方の靴
ベンチは柵の向こうで休めない
ぼくを追い越す自動車が
衝突して大破するのを期待する

こんなまぶしい始まりの朝に
誰かにとっての運命の日に
ぼくはいつでもシャッターを切れて
分かり合えないまま神経を逆なでする

すご、ギンギンだね
間抜けが過ぎるふわふわの感想
それがきみから下された評価
ぼくの僥倖はきみの存在かもしれない

おいしいね
まだ食べてない
おいしいよ
絶対だな

もしぼくがぼくを変えていたら
こうして向かい合ってきみと朝食を
取ることもなかったんだと知る始まりに
変えられなかった命の残りを始めていく