No.551

欲しいもの
禁じられている
蒸留されて
宝石になるために

きみは手を伸ばす
その手で支えるんだ
支えられていると思っていただろう
きみなしで夢はこの世に居られない

目を覚ますたび無色の光が
からだいっぱい満ちてきて
おはようを言ってくる
昨日のことなんか忘れたみたいに

何度も逃げ出したのに
びくともしないで
枕元にある
不安を食い尽くしてかがやく

たまに思い出すんだ
思い出すことを忘れないよう
手のひらに浅く彫ってある
きみもいつかいなくなるって

何も特別なことじゃない
特別は特別に埋もれて日常になる
だからって平然とできるわけじゃない
生まれながらに贅沢なんだ

なのに不思議でたまらない
きみたちはまるでこう生きる
百年後も千年後もここにいるみたいに
何食わぬ顔で他人を傷つけ他人を欺く

きみたちの一生は花の一生だ
無知が癒しであることの認識すらないまま
素直になることを放棄する
それでいて何もかも知ったふうに笑う

喧嘩している間にも
沈黙を保っている間にも
時は刻まれる
残りの明日は減っていくのに

手遅れになんないように
あとで泣いたりしないように
ぼくが今きみを愛そうとして
好きだって言うと急に泣いたりする

やわらかくて弱い者、
ちいさくて賢い生き物、
きみがぼくを慈しむ時
ぼくはきみの集めた幸福にさらされている