No.541

八日目、ぼくはきみの世界から消えようと思う。花をくれた人だから。ほんものの闇は、手ざわりを確かめるためにあるよ。だから怖いことなんてひとつもなかった。まだ怖いとしたら、ひとりで寝られないほどなら、にせものの闇だ。中途半端に見える闇だ。触れた肌が冷たくて夏の終わりを知るんだ。砕けた鏡で初恋が異形となる。口を縫い閉じられて目つきばかりは雄弁に。指のひとつで思うがままだ。だけどきみは必要な人だった。人々は知る必要があるんだ。善人でなくても生きていける、そしてそれは美しいんだってことを。朝を迎えるたびに遠ざかる。さようなら。ぼくはもうきみのものではないよ。きみの、いつだって悪びれない目は、露に濡れた首輪を見つけるだろう。見覚えがないな。緑の庭に鉄は異質で、それは跡形もなく消える。きみの意に沿うようにと。傷の一つにもならないで。この先思い出すこともないままで。きみの無慈悲が世界を救う。これからきっとそうだし、これまでもずっとそうだった。