no.377

夜が明けて踵を返す。光はいつも不意打ちだ。暗鬱を切り裂いて五感を刺激する。イエスとノーが充満した空の下。ぼくたちは生きていく。きみを傷つけるものがいる世界で。ぼくを肯定しないものが生きる世界で。血に流されてはいけないというルールはない。それを誰も望んでいないわけじゃないから。新しかったものが古くなる。閃きが思い出になる。直面する喧騒が、逃れられない痛みが、戸惑う隙も与えない流れが、結晶になって砕け散る。綺麗だねと言える。破片のつなげかたはわからなくても。どこまでも持ち歩けるねと笑える。もう元には戻らなくても。大切なものは少ない。慈しむことができるものは多くない。朽ちていく冬の木は春の訪れに場所を譲る。最初に鳴り響いた音楽をこれからの愛と定義しよう。