no.363

光が侵していく無名の庭
いつ切り出そうか考えている
ぼくは神さまじゃないと
きっとあなたは知っている

たがいたがいに持っていた
暗くて甘くてぬるい秘密
それはシロツメクサの指輪みたいに
簡単にほどけちゃう類いなんだ

ランナーみたいに脇目もふらず
好きなものを好きだと言えばいい
わかっているのに遠回り
傷つけたくないなんて言いながら

傷つきたくないのは自分だった
しょうもないことで
苦しくなるだけなのに
それもそうだって認められない

終わりを何度も経験して
始まりは何度も始まって
数も覚えていないんだ
忘れたくなかったはずなのに

言葉を取り上げて
優しいスプーンで
不可逆性の蜜月と怠惰
あなたを好きで仕方がないです

そのことに困惑しかないです
満月も利用できないで
病気にもなれないで
ただ健やかにあなたを想ってる

呆れられたい
見守られたい
泣きながら笑って見せながら
本当はいつでも裏切っていいよ