No.716

いつか使えなくなる
弱い魔法を繰り返してた
きみにたぶん魔法は効かない
それでも懲りずに繰り返してた

雨の夜になると
たまに泣くのはなぜなの
そう尋ねたぼくに
助けなくちゃと思うんだと答えた

(なにを?)

空を
たくさん零さなくちゃ
みんなに行き渡らないだろ
少しでも助けなくちゃと
微力ながら尽力を

ぼくはからかわれたのかも知れなかった
だけどなんだかわかる気がした
空からきみを見ているときは
しょっちゅう絶望を抱いたものだから

そんなにつらいのなら
落ちてみればいい
あのひとはそう言いぼくの背を蹴った
乱暴なひとだ、ほんとうに乱暴な

ぼくには魔法が使えるんだよ
うん知ってる
秘密にしてたのに知ってるなんて
使われているなあと思っていた

きみが笑うので人差し指で星を撃つ
弾けた破片がひろげた掌に落ちて
それを捏ねて宝石にした
悪いことをするね、ときみはまた笑う

カラスが歩く
目玉焼きが焼ける
紫陽花はもう少しで咲きそうだ
そんな風景にきみのいること

見慣れた
変哲もない
それゆえ憎むことさえあった
きみが加わるだけでまた輝くということ

初恋はやぶれる
好きな人とは結ばれなかった
だから今に至る
住むべき人と暮らせる惑星