【雑記】きみを自由にできるのは

22:47の空にオリオン座が光ってて
文具店は閉まってて
私のあたまをスピッツの8823が流れたのだった
解析の瞬間だ
人は優しく
人は無力で
クズと呼ばれても笑うことができる
平成がもう三十年目か
信じられんよ?(昭和生まれ)

2+

no.375


ほしい
たましい
ひとつだけ
駅の自販機
生き物
と呼ばれてもいいよ
この星で
いて欲しい
凍てつく
月々を
日々を
響かせる
それは求愛
地球
宇宙
編み込まれたミトン
指先がまだ少し余るの
誰の落し物だろう
自分以外の気配
恐怖と期待
今日は行きたい
味方を知りたい
無用のマシンガン
羅針盤の使えなさ
ささやかな第一歩
抜け殻がもう光景になる
私も僕も美しい
清く正しいから
まだ何も守れていない
殺されたいほど思われたい
星が欲しいと思いたい
それを誰かに言いたい
笑い飛ばれたい
吹っ飛ばしたい
にじりよる暮れの息吹
虹の温度と
ちちんぷいぷい陳腐の呪文
十七歳の天才
きみから破壊して
破片の鋭さで傷つきたい
痛い
遺体を欲しい
したたっていた生の名残
それがこの星の成り立ちだからだ

1+

no.374

うまく、できない
できていたことまでができなくなる
なんで好きになっちゃったんだろう
どうして思い通りにならないんだろう

運命って言葉で片づけたくない
だけど早く楽になりたい
たくさん時間を費やして
おとぎ話のように暮らせたらいいのか

呪いにかかったみたいに惚気てる
ある人は怒り出すかもな
ぼくはこんなに優柔不断だったのかと
あのころのおまえに戻れよと

迷いやためらいと無縁の毎日だった
ときどきは後悔もするさ
だけど間違いなく色が増えた
ぼくはきみを真実厄介だと感じている

つめたい手があたたかくなること
だけど放っておけばまたつめたくなること
めんどうくさくて頼りがないな
いなくなると困るから目が離せないな

どうしてしまったんだろう
これはきっとバグなんだ
蜜蜂みたいにうるさい
甘いものなんか好きではないのに

2+

no.373

オブラート
難解な言葉
嘘や棘
ちがうな
ただ好きなんだよ
認めなくても
三つ編み
そらされる視線
斜陽
刺繍のほつれ
きみを否定するきみが
ぼくのことなら肯定する
それでいいと思うんだ
まずはそれでいい
きみはぼくがなんとかする
夜空より途方もない雑踏で
迷わないように名前をつけよう
なにひとつ平気じゃなくても
不安は覚えていないんだ
心は自動装置だから
まちがえば苦しいし
ただしいときには高鳴るだろう
何も信じられないとき
からだに耳をすますんだ
ぼくたちはお互いのおまけなんだよ
顔も似ない生い立ちも違う双子なんだよ
傷の痛さはどうしたって伝わらないよね
でも教えてくれればてあてができるよ
訴えることの意味はそこにあるんだ
絶対的に完璧な共有なんかじゃないんだ
凍てつく街を抜け出してわかったこと
わかりたいと思えたとき
ようやく命が降って来た
まだからっぽだった二人のたましい

3+

no.372

カラメリゼの空
透明度と引き換えに投影する
何百年も昔のように不可侵な
一緒だったと思っていいですか

あなたがのこそうとしたものを
ぼくは正しく受け止めていないだろう
今ここにいたってそれは可能ではない
言葉を交わしたって離れていくだけ

上下左右の鎖から解き放たれて
遊泳してるんだ胎内より広くを
何も決めかねて何者にもなれない
そうしているうちに輪廻に乗り遅れる

メリーゴーランドは記憶の中にしか
存在しないと思っていたのに遊園地
夢にまで見た観覧車とすみれの庭園
のこりの週末がいっきに来たみたいだね

笑顔くらいつくれるよね
あなたはやさしいから
ぼくを困らせたりしないんだろう
ぼくは困ることもできないだろう

ようこそ
おとぎだらけの国へ
ようこそ
匿名で安心の劇場型逃避行

日陰と夜ばかりをえらんでまっすぐ歩こう
あたたかい記憶が邪魔をしても
顔を隠して手だけは離さないでいよう
生まれ変わる日なんて来ないから今を生きよう

ポップコーンではお腹いっぱいにならない
羽みたいに軽いんだもの
いま食べたことももう忘れちゃうようなさ
こんなにもぼくたちに似通ったもの他にあるかな

2+

no.371

川を流れる水よりもそれに映る星の光よりも取り返しのつかないこの時間をどうか大切にするといい。あなたにはまだわからない。それがどんなにしあわせなことか。幸せはいつも失われたときに輪郭を持ち始める。だから大抵はみんな幸福だった。太陽と月のうわさばなし。おたがいのことをおたがいよりも知っているのにね。それを直接伝える手段はない。風やこどもに委ねるだけ。信頼が生まれて絶対の存在にも愛嬌が宿る。備わらずに欠陥となった部分は絶好の注ぎ口だから。あなたはそのまま持って生きておくといい。きらいなところ。にがてなこと。どうしても克服のできなかった、あなたのよわい部分。それなくしてどうしてふたりになれるだろう。会話の意味。沈黙の心地よさ。つむじをじっと眺める。長い夜も短い朝も好きになれる。靄の中を手探りで歩いたって怖くない。あなたがいつか出会えるよう、ぼくはまだ土の中で祈ってる。その時は必ずあると信じてる。祈りとは信じること。願いとは一方的な約束。たとえばあなたが輝かなくても、たとえばあなたがぼくを忘れても、それはもはや関係のないこと。あなたを見送っている。あなたを慕っている。本当にありがとう。愛は絶えなかった。

3+

no.370

憧れはいつか鎧を着て
好きを戦わせなくちゃいけない
輪郭のドレープが優しくて
守られることの終わりを見た

くらべるものではない
ラベルを貼られるものではない
そうは分かっていても
物語は勝手に始まりぼくは演者となる

魔法使いが言う
ままならないことを望んだだろうって
そんなわけないじゃないか
だけど理由が思い浮かばないんだ

暗号を解読したくなかったからなのか
うなじに手を伸ばしたくなかったのは
疑い出せば信じ抜くようになる
何者でもない地点からまだ動き出せない

寄り添うような恋をしたかったけど
たちまち愛と勘違いされる
あいまいな境界すくえない少数派
火を起こすには摩擦の程度が足りてないんだよ

実物を知らない描写が無邪気に君を蹂躙する
どこかで思ってるんだ、くじけてしまえって
ぼくのやっていることは真犯人より
ずるくてみにくくひどいことかもしれない

ぼくの憎んだあのひとが
悪役でしか生き残れなかったように
ぼくもまた配役を選び取る
正しいと間違いは表裏一体

まばたきしているすきにコイントス
偶然が世界を操作する
切り離されて繋がりたいと思った
確認を繰り返して純情はぼろぼろだ

やさしい嘘を口ずさもう
誤変換の果てでどこへたどり着くんだろう
次に生まれ変わったらなんて考えないや
信じることは怠惰だって知らないわけじゃなかった

3+

no.369

どんな場所より居心地がいい
僕をダメにしてくれるから
それは上昇志向と無縁
インスタントの空気でも美味しい

傷つけられたことを
記録した媒体は押し流される
ほとんどむきだしの魂で
得体の知れない海を泳ぐ

ひとびとの足音
近づいたり遠ざかったり
波と大差ない
つまりいつか好きになれる

きらいな食べ物を教えて
邪魔しないようにするから
都合がいいのは愛の特権
何にだって生まれ変わってみせよう

3+

no.368

あなたはずるい
だなんて至上の殺し文句
考えもしなかったけど
それ以外の方法では死にたくない

夜ごと連れて歩いたよ
誘拐された僕を見つけに
みんなが大切を疑う日に
さみしいを自覚する

綺麗なものから消えて欲しかった
鑑賞して浮き彫りにされるのは
耐えられない、もう
美しいは残酷だ

両腕いっぱいの花束をきみに
手持ち無沙汰にトドメをさして
平穏とは永遠にさようなら
僕以外を手にかけないよう埋め尽くして

3+

no.367

色画用紙を切ってリボン通しただけのしおり
今はラミネートだってできるのに
落ち葉の中に隠れていたのを見つけて
遠回りなんかするんじゃなかったって思った

本能だろって笑わないでくれ
理性できみを好きだって証明する
だけどそのためには時間が必要
たとえば朝にミルクを温めるまで

馬鹿にされて悲しかったことはない
そうする人が周りにいることが悲しい
人間は技術のように進歩しないし
やがて欠陥が個性になるんだろうけど

行きたい場所はスマホの壁紙にする
思いはいつも先回りされる
時期をずらして咲き乱れる花々が
もういなくていいよって僕にいう

ずる休みの午後二時
いなくても大丈夫だって涙目が気づく頃
不可欠な臓器にはなれない
不在でしか存在できない

スパークする記憶はつかみどころがない
真冬に花火なんかしてる
ぐちゃぐちゃになるまで何度でも混ぜて
僕に似せられた夜をやり過ごすために

2+