【雑記】おきづきかな

平成の投稿はNo.678が最後です。

平成では、インターネットと詩に出会えたことが自分にとって非常に大きかったです。この2つがなかったらどうなってたか分からない。どっちが欠けてもだめだったと思う。
そして、私が書いたものを読んでくれて、感想やハート(いいね)をくれた人のいてくれたことが大きかったです。ありがとうございます。
みなさんはこれからも、感想やハートは伝え続けるべきだと思います。
作者ってものすごい自由気ままに発信してるように見えても、(あれ、これって意味あんのかな。もう終わろっかな)って、ふっと賢者モードになることがあるので。私に限らないと思う。
習慣、勉強、仕事、趣味などにおいて、たくさんのものを中断したり捨てたり諦めたりしたけど、詩はとても自然にそこにあったと思います。たぶんものすごく手軽だったからだと思います。削ぎたいように削げて、付け足したいように付け足せて、小回りの効く表現手段だったからだと思います。私にとっては。
前は、イラストや音楽など直感的にわかるというか一瞬で訴えかけられるような手段にあこがれたこともあったけど、私が手にした武器は言葉なので(確信)、もし他のものに手を出すことがあっても最終的には言葉の上に還元していけたらなあと今は思います。
またちょっと前は「けっきょく自分のために書いているんだ」という思いが強くて、それを好きに解釈してもらえればいいんだとかたくなに思ってたけど、すこし手を加えることで誰かへ届くのなら、伝わりやすくなるのならそれもいいかなと、ちょっとまろやかな思考になりました。今はそんな感じ。

うむ!

ところで、お気づきだろうか。
4月21日から毎日更新していた詩がカウントダウンになっていたことに。ほかの数字も混じってるけど、一応カウントダウンぽくなってる。

4/21 No.669
あと日もあれば僕たちはきっと足並みそろえて新しい朝を迎えられたのに。

4/22 No.670
ふやけた時計の針は午前時。まだまだ終礼にはほど遠い。

4/23 No.671
度目の正直を裏切って

4/24 No.672
色の名前をひとつずつ覚えた

4/25 No.673
次は本指に作ってください

4/26 No.674
色の鳥が待ってる場所へ

4/27 No.675
つ葉を編んだ指輪をあげる

4/28 No.676
原色の透明部分にかくした暗号

4/29 No.677
子のぬいぐるみがやって来て
うなだれた僕の前でおじぎする

4/30 No.678
あと歩が踏み出せない、どうしてだか信じ込んでいる、あと一歩が僕たちを駄目にするのだと。

明日のぶんは予約投稿したので、0時に更新されるはず。予約投稿はじめて使うのだが正常に投稿されるといいな。

カウントダウンはそれで終わり。

エメラルドはまだまだ続きます。

8+

No.678

ないものはないのに、今の二人にすべてが降り注いでいるのに、あと一歩が踏み出せない、どうしてだか信じ込んでいる、あと一歩が僕たちを駄目にするのだと。銀の糸に視界を遮られ、蜘蛛の巣みたいだって、思ったのはたしか、でも言ったつもりはないのに伝わっていて、それはお互いの心が透明度を高めすぎたせい。おまえはすごく怒るんだけど、体温はあがらない、もう死んでいるからね、だけどすごく怒るんだ、蜘蛛の巣と言われたことが気にくわないのか、沈黙を破ったことに我慢ならないのか、感情が動かされて仕方がないんだ、だっておまえ、僕を好きだろう?蜘蛛の巣だと言ったのは中傷じゃない。僕はちいさな頃、今だっておとなじゃないけど、もっとちいさかった頃に家出をしてね。ベッドの中から見ていた夜と、群青以外に包まるものがない肌で感じる夜とがまるで別物だって恐怖したんだ。いや、ちがうな、同じものだから怖かった。こんなに変わっても同一なのかと。だから翌朝死のうと思った。方法を考えているうちに眠りに落ちて、見慣れたいつもの朝が来た。夜の気配はどこにもなくて、眠りに落ちる前に考えていたことが思い出せなかったくらいだ。そのとき僕の視界に光るものが入ってきた。頭上の枝にはられた蜘蛛の巣だ。それは朝露をとらえて正体を露呈していた。蜘蛛にとっては不都合だったかも知れない。だけど僕の中には今も、銀色したこまかな網の目と、とらえられた宝石の数々、そのむこうに明るんでいた始まりが、心地よい低音で流れてる。僕の血や肉になることはない、だってそれは記憶でしかないから。だから忘れないでいられるんだ、欲しくなったら目をつむって耳をすますだけ。これを聞いてもまだ僕のことを殴りたいと思う?そうじゃないよな、大丈夫、言わなくてもわかるよ。僕たちはたまたまひとりじゃないだけ、なんと言おうと限りなく透明へ近づいてるんだ。

4+

【雑記】幼女の懺悔

思い返しても「あれはしてはいけないことだった。今後どんなにつらいことがあっても絶対にしまい」と胸に誓うのは、わたしが幼稚園生の頃にしてしまったことです。近所にスーパーがあったのですが、夏になると8分の1スイカがならびました。わたしはその尾根(?)の部分を指で押してデコボコにしてしまった。押したいから押したのだが、きっとあのスイカは誰も買わない。なぜなら一番最初に食いつきたい部分が何者かの指で押されてボコボコにされていたので。もし犯人が幼女だとわかればすこしは「なーんだ」で済んだかもしれない。(済まない)。しかし犯人は何食わぬ顔をしてそのまま店を出たので、ボコボコにした犯人が実際誰なのかは想像もつかない。もしかしたら毒物を注入されたかもしれない。汚れた手の持ち主かもしれない。そう考えると売り物にならないだろう。当時のわたしには思いもよらないことだった。スイカを育てたひと、トラックで運んだひと、それを店頭に並べたひと、スイカを食べたくて買い物に来たのに買えずに帰ったひと、みんなの気持ちや経済に良くないことをしたと思う。本当に本当に申し訳ないことをした。だから夏になるとたくさんスイカを食べる。寝る前にたくさん食べると就寝中に尿意をもよおすが眠気を押してトイレへ行く時間はわたしへの執行時間だと思うのであの夏ダメにしてしまったスイカのことを忘れずに令和の夏もスイカを食べたい。もしあの夏あの夕方スイカ食べたかったけど買わずに帰ることになった徳之島在住の人がいま幸せならいいなと思う。あと子どもはスイカの尾根を指で潰す誘惑に勝てるほど強靭な自制心を持ってはいないのでもしスイカの前にたたずむ子どもがいたら目を離さないで欲しい。そして尾根を潰す動きを見せたら怒らずにスイカの生い立ちやかかわった人のこと、ちゃんと伝えてあげてほしい。人類の願いである。スイカは重たいし、育てるのもとても大変だ。それに、夏の風物詩というシンボル的存在でもあるからして、やはり、わたしはなんてことをしてしまったんだ…つらい…。と思う一方で「しかし無理だろう」と反論する声もある。あんな剥き出しの尾根を潰さずにいろと言うのか?8分の1カットだぞ、4分の1でも6分の1でもなくて。8分の1カットの絶妙な鋭利さ。「どうぞ指をおいてください。そのうえでそっと力を加えてください。シャクっと音を立てて凹みますので」と言わんばかりの姿…据え膳食わぬは5歳児の恥!…ああ、いけない、これではまるで反省していないどころか開き直った、大人になっても自制心のかけらもない不届きものみたいではないか、いやそうなのか?そうだとしても少なくとも悪いことをしたという自覚はあるんだ、そのうえで今なお葛藤してるんだ。でもやっぱり悪いことだ。してはいけないことだ。あれ以来一度もしていないし、8分の1カットに対しては本当に目にするのもつらい。ごめんなさい。

3+

No.677

信じてなかった
空に格子は嵌められないんだ
あなたを信じて良かったのだ
ほんとうを言われて嬉しかった

つむじに雨が落ちてきた
鼻先に頬に落ちて唇を流れる
あなたは傘を持つだろうか
シャツを乾かしながら考えた

忘れられないひとに
すこしだけ似ていた
そのことが僕にとって
毒か薬かはわからない

どんな言葉もあなたではなく
あのひとから発せられるかもしれない
どんなにぬくく安心できても
それはあのひとの錯覚かもしれない

そんな自分を僕は許せるだろうか
そんな僕にあなたはもったいないと
手放したり傷つけたりしないだろうか
天気のいい日に考えることが多い

暗い想像で貶めるんだ
世界が輝いて見えるときは
コントラストで罰するんだ
笑っていいなんて言われていない

双子のぬいぐるみがやって来て
うなだれた僕の前でおじぎする
あのひとはあなたの前から去ることを
ご自分で望まれてそのようにしました

どうやらこのウサギ
ビー玉の目をしながらものを言えるらしい
僕は缶コーヒーをあおりながら
違和感もいっしょに喉奥に流し込んだ

それに、と右が言いかけ
貴殿は、と左が言葉をつなぐ
それに貴殿はお気づきでしょう
何もかもが明るみに出ていること

コーヒーをぶちまけた先にあったのは
ちいさな灰色の双子ではなく
僕へ会いに来たあなただった
清潔なシャツを汚してしまった

弁解できない僕を見てあなたは
困りながら笑うんだった
気づいていなかったんだね
空に格子は嵌められないんだ

毒でもなく薬でもない
他ならないあなただ
あのひとのことや僕のする暗い想像
すべて知って微笑むあなただ

笑えないことや許せないこと
拭い去っても拭い去れないもの
ひとつずつ話していこうと思う
一瞬の気休めは雨にまかせて

3+

No.676

それはきみを弱らせるもの
香ばしくて甘い
艶々とみずみずしい
それなのにきみを弱らせるもの

嘘のように聞こえるだろう
だけどいつか気づくはず
ぼくが必死だったこと
三原色の透明部分にかくした暗号

朝がいつまでも続かないように
夜道でも前へ進めるように
泥だらけでも立ち直れるように
星を見つけられず途方にくれないように

屋上からふっと消えないように
線路の向こうに砂浜を見ないように
視線を恐れてどこにも行けなくなる前に
鉄格子の指先から力が抜けないように

信じなくてもいい
分からなくてもいい
正しくなくても選べるということ
きみがやがて教わることだ

空には境目がないのだから
きみがきみを許すことにも理由は要らない
雨があがったらきっと伝える
きみにぼくと生きていて欲しい

4+

【雑記】身近にあった平成の奇跡

小3の1年間書いてた日記帳を発掘する。クリスマスプレゼントに鍵付きの日記帳を買ってもらい、そこからの1年間。日記帳は毎年買い替え、たしか小5まで日記帳は続けて、小6でインターネットに会ってメルマガにうつったと思う。雑記や記録系は。でもこの日記帳が始まりなんだな。読み返してみたら、いろんなことを感じたり、素直に喜んでいたり、子どもっぽいなあと思う。子どもなんだけど。1年間で字とイラストが上達してるのも趣深い。ていうか字が男子のように汚い…おっと性差別かな。まあまあ平和に幸せに過ごしていたのだなあと思う。それから自分1人で書いてるのに他者の目を気にしてるのが興味深い。日記帳の最後に「この日記帳をここまで読んでくれたみなさん。最終回なのでカラーでお送りします!」的なこと書いてあって我ながらほほえましひ…。あと1日書き忘れたとき翌日に「すみません」から始まるのな。だれに謝っているのか…そうか未来の読者か、つまり私だな。書くことが好きだったんだなーとあらためて思った。好きかどうかも考えたことないくらい習慣づいてたんだけど、後から見たら分かるものだな、絶対すきでしょ。少なくとも友達とワイワイ遊ぶより明らかに好きだったことの1つでしょ。ぶっちゃけ友達と遊ぶのやワイワイするのや「わー」とか「すごーい」とかするのほんと嫌だった。今なら「それでいいでしょ、べつに」って思えるんだけど子どもだから、心から楽しめない自分に罪悪感感じたり何かと視野狭くて哀れ。草むらでしゃがんでる方がほんと安心できる。うむうむ。それで良き。持ち物少なくしたいので割と躊躇なくポンポン廃棄する性格だけどこの日記帳が今まで捨てられず残ってきたことも平成の奇跡である。

4+

No.675

殺せるはずがないと思ってた
殺されるはずもないと思ってた
思ってたからこそ無意識だった
あと少しできみを死なせるところだった

ふるい日記帳を読み返してみれば
遠いはずの記憶はずっと近くて
消えるものはないと知った
消えたと思うものがあったとしても

きみを、だいじにできている?
鏡の中にそう問いかける
もう、離れて行ったりしない?
自分を棚に上げてそう懇願する

問いかけとは懇願だ
回答者を縛り付けることができる
ずるい手だと自分でも思う
でも我慢はやめたんだ

決意するまで時間を要した
うすうす感づいていたくせに
きみはずっと寝たふりをして
ぼくが目覚めるのを待ってたんだね

あまりに白いシーツの上
投げ出された手のひらに
四つ葉を編んだ指輪をあげる
今度はぼくが、むかえにいくね。

4+

No.674

ゆうゆうと愛を食む
消したほうが増えるからと
神さまが言うんだ
一度も助けてはくれなかったが

ぼくはきみの指をもらおう
きみにぼくの心をあげよう
不完全も内包する
ここはパーフェクトワールド

悪意がなくては輝かない
信じ抜くほど無垢になれる
馬鹿を見たって痛むものか
産まれた以上の馬鹿はないのさ

存在する罪
息を吸うたび刺さる棘
忘れられるご褒美もないのに
記憶の上塗りを続けてる

ぼくを見て
きみを見て
ガラスでできた橋を渡って
五色の鳥が待ってる場所へ

ひっくり返してのぞき込んで
ひた隠しのエピソードを知ったところで
ひとつに戻れないことは覆せずに
ありふれたふたりに甘んじて朝を待つんだ

4+

No.673

きみの曲が弾けなくて
名前のない方角へ頼んだ
次は六本指に作ってください
人はそれを祈りと呼ぶ

好んでこの地を這っているの
捨てられた破片が手に入るから
誰もが決めかねていると分かるから
目線でごまかせたとしても

嘘で塗り固めた優しい世界
真実は意地悪なばかりで
偽装だけが唯一感じられる
ぼくにとっての温もりだった

誰にも弾けない曲は
誰にも聴くことができない曲だ
きみの心臓だけが奏でうる
ぼくが誰にも聞かせたくない音楽だ

3+

No.672

ぼくにもはじめて見えたんだ
つないだ手と手をほどいたら
月光満ちた秘密基地
ぼくの名前は片仮名で
きいろの子猫を飼っていた

迎え撃つ罠さえ甘い
いばらが優しく覆ってる
ぼくを救えなかった人
ぼくが救えなかった人
みんなここでまた会えたんだね

骨の代わりに緑の種を蒔いた
いつか花が開くように
それは夏の雲みたいに盛り上がって
閉ざされた棺を押し上げるだろう
内緒話に羽が生えて秘密は消えた

夢みたいだね
そう言う今が夢なんだよ
夢だった
ここはいつだって
夢だって悪くない

手と手のあいだで光るもの
いつでも逃げ込める秘密基地
シャツを脱ぐように汚れを落とした
優等生が捨てた煙草を拾い
大人になれなかった弔いをする

手と手のあいだで光るもの
七色の名前をひとつずつ覚えた
もし人に教えたらなくなるとしても
もし人に話したらモノクロになっても
ぼくが見たかった景色に色彩は要らない

4+