No.644

欲しくない。伝わってるよと言って欲しくない。僕が嘘を言わなくても。正しく伝わった、そう感じた瞬間に、取り返しがつかないほど、僕らの時間は巻き戻される。そのくせ全部覚えてる。上書きされて真っ暗なキャンバス、どんな色がどれだけ積み上げられて、何が隠されたかも覚えてる。ときどき思うんだ。ずっと夢だと思ってる、だけどここが現実なんじゃないかって。もう少しで届きそう。もう少しで見つかりそう。自惚れた途端、空から星が落ちてきて、また真っ暗になるんだ。やむなく次の光を待ってるんだ。足元で砕けた破片は皮膚を切り裂いたかも知れない。血は赤いんだろうか。命は尊いものだろうか。それだって確かめることができない。できないでいる、解けない謎くらい、ここに残したいから。叫ばないでも、君には気づいて欲しいから。

3+

No.643

青い星座になり永遠へのぼってった。初めて行く場所なのに怖がらないで。群青の下、僕は人間だ、どうしようもなく。一度掴んだものを離すときに強く感じるんだ。昨日と明日がまるで違って見える。きっとうまくいかない、忘れたふりはうまくいかない。手先は器用でも思いは消せない。もしも思いが消えてしまえば、それは僕じゃない。優しくなかったあなたを忘れて、あれは優しい人だったと言い聞かせるようになったら、僕はもう僕じゃない。好きだった。どうしようもなく、好きだった。良いところなんかふたつもない、ひとつしかない。あの目、僕を見る目が好きだった。眼差しを忘れそうになったら、月の隠れた夜空を見上げよう。名前のない星座が瞬くから。手を伸ばしても届かない遠くで。どれだけ距離が離れていても、僕は平気。この光は銀河を貫きここへ来た。項垂れる僕を、嘲笑って、心のどこかに灯ってる。これ以上のわがまま、僕はきっと、死ぬまで知らない。死ぬまで待てない。

4+

No.642

書いては消して書いては消して。この世でもっともちいさな殺しは推敲である。生き別れた剥製が、臆病によってまた解き放たれる。嫌われるのが怖かった。好かれてもいないのに。傷つけるのが怖かった。深く刺さる爪もないのに。何もなびかせず、誰の視界や人生も邪魔することなく、死にもせずに生きていきたかった。たくさん恥をかいた日には棺桶で眠った。生花をたくさん敷き詰めて。干し草にしなかったのは、数少ないわがまま。すべては禁じられており笑っていい一日なんかないんだ。気づかれずに消えたい。霧は狡い。明るくなって目をあけて、いっそ自分以外の手が伸びてくるのを待ってる。瞼なのか、首なのか。手と手であるのか、引っ込められるのか。待ってる、蕾がすべて咲く前に。奇跡はぼくが起こすんだ。言い聞かせるばかりで、予感ひとつに託してる。消しては生んで、消しては生んで。

7+

【雑記】はじめましてをもう一度

1番最初に見た個人サイトって覚えてます?

インターネットにはじめて接続して、Yahoo!とかジオシティーズとかそのへんのプラットフォームから最初ははいったんだと思うけど、さいしょに見たサイト。ホームページ。個人の。

私、最初に見た小説サイトと最初に見た雑記サイトのこと、トップに飾ってあった絵とかまで思い出せる。マウス手書きの。昨日のことのように、は言い過ぎだけど覚えてるほう。

今でこそ日常をのぞきみるのって簡単じゃん?のぞきみるといいますか、のぞきみせられるといいますか。でも、最初「ほ〜う!」てなるよね。

他の女子グループの交換日記みるようなかんじ?しらんけど。

今でこそ見られる前提、読まれる前提でやってるじゃん?SNSとかインターネット。でもほんと、なんていうか「吐露してます感」がすごかったのね。さいしょは。

(なんかすごい年寄りくさい話っぷりだな・・・)

いやいやITの進歩すごいから仕方ない。

そのころって匿名であることにみんな救われてたんだと思う、私もだけど。匿名でないと書けねえだろこれって話がダーッと書いてあって、私はあまりプライベート書かないほうですが(だと自分では思ってるんだが)、もうほんとうにどうしようもないつらさを書いてる人とかいて、その子が私の書いた詩といっしょにお墓で眠りたいって言ったの割とけっこう残ってる。

今生きてない気がするんだけど、どうなんだろう。
生きてたら、元気だといいな・・・ってのは善人すぎるな、本心ではない。
この子が安らげているのだったら、べつに生存でなくてもいいかな、って。

わたしそういうの、あまり「絶対生きて」的なやつ、言えないや。死にたがってるひとには言えないや、ってか言いたくないや。

何かっていうと、ひさびさにログを発見してですね。ふぁーとなったので。つながりが消えても言葉は残るんですね。

絶対なんて言わないほうがいいなあ。だって、ないもん。

どうでもいいひとにだけ嘘をつこう。きっとみんなそうしてるはず。

「でもそれってひどくないですか」って、は〜あ?自分にとってどうでもいいひとでも、誰かにとってだいじなひとなんだからおまえが不安がらなくていいんだわ。そういうの、傲慢だぞ傲慢。

4+