青いものが果たしたもの。赤いものが運ぶもの。あなたがまぶたをひらくたびに、羅列をひとつはめていこう。パズルのピースが足りなくなる前に、ぼくが何もかもを忘れる前に。この世界にはすみっこがなくて、ひとりで泣くこともできないんだ。それならぼくが隠してあげよう。あなたの名前を奪ってあげよう。死にたい欲求を誰にも悟られずに、手品のように消してあげよう。思い立ったら花を手向けよう。何も知らないひとがそんな姿を見て涙を流すだろう。うつくしいね。かなしかったろうね。ぼくは微笑むために俯いてしまう。光景はちぐはぐでも、流れる涙はほんものだ。意思の断絶がなければ、こぼれなかった。おなじ命、わかりあえないことは、それほど悪いことじゃないよ。春が来る。あなたに一度も愛されなかった、どうしようもない季節のことだ。
月別: 2019年1月
No.626
雨音がきこえる
ずっときこえる
白い教会のある町だ
ぼくたちに血のつながりはなかった
昔の人たちが守ってくれた
目隠しの存在には感づいたけど
誰も責めたりしなかったよ
正しさの敵はまたべつの正しさで
鏡と鏡を向かい合わせに置いて
その真ん中に立ってみたんだ
どこまでも永遠が連なっていて
なんだってかすり傷に思えた
雨音がきこえる
晴れていても今日も聞こえる
誰一人としてぼくと同じ音を聴かない
この町でたくさんの血が流れたんだ
No.625
夕陽、カラーセロハン、折り鶴、夢見心地、ドロップ、鍵盤、波、サイダーの泡、片足だけのローファー、黒猫の瞳、きれいなものを見つめていると、消えてしまいたくなるのはなぜ。調和のとれた景色の中に立つことを、まだ許されていないと思う。きみのとなりを許されていないと思うから。吸う息を半分にして、もう一息でいのちを半分こにして、文句なんて言わないで、卑屈なこと自分がよくわかってるんだ。ぼくのほうが優勢で、きみのほうが劣勢だとしても、ぼくはいつまでも恥じるだろう。いたたまれない、その衝動だけで踏み出してはいけない一歩をかんたんに踏み出してしまうだろう。見つめられたくない、ただ見つめていたい。視界にうつりたくない、ただうつしていたい。肉になっても、骨になっても、きみが誰かを愛して傷つけられるだけのその時間を、ぼくは何も感じない神さまみたいに守りたいんだ。これはきっとバグだから、ただしく修正されることだろう。きみは安心安全に、ぼくを忘れて生きていけるよ。報告します。生きてこられたよ。きみのおかげで。きみのせいで。ぼくは正常であり、異常なし。身体検査なんて不要なくらい、次こそまともにうまれてみたいな。命令をして。死んではいけないと。そうしたらぼくは初めてきみを裏切るだろう。バグは回復しなかった。きみの発明品は自我を持った。すばらしい、絶賛の嵐だ、きみは少し泣くかな、泣いてくれるのだといいのだけどな。命令をして。
No.624
あなたにふれるといつも思い出す。ぼくがほんとうはとても弱かったこと。あなたみたいな影がよぎる時にいつも思い出すんだ。ぼくがあなたに嫉妬していたこと。おなじ春なんて来ない。悲しいニュースが破り捨てられて、世界はいつも美しかった、誰の目にも平等にうつっていて、だから心がひしゃげていたんだ、あなたの吐き出す言葉の熱で。たとえばそれを毛糸にして、生まれて一度も休まない心臓を休ませてあげれば良い。たとえばそれをチョークにして、使う人のいない黒板で消えてなくなるまで削れば良い。たとえばそれを、たとえばそれを、ぼくからあなたへの贈り物だと言って、毒と名づけたため息を叩きつければ良かった。ああ、あの日、そうすればよかったんだ。傷つけないですんだのに。今ごろきっと忘れていたのに。残酷でなければただの夜に、優しくなれない光が降るんだ。誰もいない、誰もいない真夜中のなかだ。あなたの声だけが頼りだなんて、心もとなくて仕方ないや。
No.623
きみの手はもう痛まないだろう
柔らかな雪の上で爆薬を詰めないから
記憶を白黒で思い起こしたり
子どもの笑い声に苛まれることもない
隔たりは茎によって崩されたんだ
とたんに言葉が行き来を始めて
別れなんてどこにも無かったみたいだよ
そしてそれを幸せだと言う人もいるんだ
あの日もそうだったように
キッチンには甘い湯気が立っている
用意されたガラスの瓶に
七色の光が溜まっていく
忘れないように忘れないように
生きていきたいんだけれど
遠ざかって遠ざかってく
きみの手は真っ白だね
きみは知らないでしょう
だってぼくも知らないんだ
それだけがほんとう
隠したがった真相は腐りゆくジャムの中
No.622
うつらうつら
パズルのピースが剥がれてく
ぼくが見たかったもの
ああ、ぼくが見たかったものだ
完成しないよう飲み下したよ
ウエハースみたいだった
そんな気がするんだ
そんな思い出にしたんだ
悲鳴も歓声も聞こえない
ほんとうの静寂は
ほんとうの平和は
色も音楽も要らなかった
ぽとりぽとり
鼓動のたびに血が海に落ちていく
なかなか帰らないので一滴一滴
次は夢で再会しよう
修正は必要ない
終われば良かったんだ
きみが見る夕陽に溶けて
今しかない、この今を照らすんだ
No.621
夕闇も朝焼けも蜂蜜の瓶に詰めて
変わり過ぎた窓の外を見る
このガラスは決して割れないはずだけど
誰も信じられず四歩遠ざかった
恋人たちは愛ばかりして
たまに脇目をふったりする
視界に入るぼくにはまだ色がないので
安心したって声が聞こえて視線を外す
誰かの幸福が誰かの孤独の上にあって
誰かの涙が誰かの火照った体に落ちて
誰かのいとしい人がぼくには厄介で
誰にも害を与えず風船になって割れたい
苗床にもなれなくていい
肥料にはなるだろうけど
ぼくが溶けた土にこの世の花が咲くだろう
保存されない種には澄んだ風が寄り添うだろう
No.620
信じられない
回転木馬がまわるなんて
信じたくない
命がめぐりめぐるなんて
だけどいつも祈りだった
信じたくないことは
いつも黙っていた
非力なぼくの発する祈りだった
おまえの幸せは凍てつき
ぼくの心臓を冷たくする
両手いっぱいの針で
傷ついてでも傷つける
まだ生まれてもいない春を待つ
どうせなら一度も明けない夜でいい
おまえが幸せでないよう信じている
おまえが不幸せでないよう祈っている
両手いっぱいの針を
いつか花束に変えられるよう
おまえに嘘を見抜かれないよう
つないだ時にもう痛まないよう
【雑記】他愛もないこと。
日記らしいことも書こうかな。
・ルマンドが主食ならいいのに
・ブルボンのお菓子は皆おいしい
・プログラミング言語の勉強はじめた
・餅を食べた
・きな粉餅が一番美味しい
日記じゃないな。
今読んでる『amazon 世界最先端の戦略がわかる』がとても面白いです。私プライム会員で大活用してるんだが、こーれは抜け出せないわけだ。ついつい楽天より使っちゃうもんなー。
あー、世界ってひろいな。ひろいけど近い。自分が拒まなければ人は案外受け入れてくれるものだ。自意識過剰なんだよ。
話は戻って、ブルボンのお菓子は本当に美味しい。ルマンドも好きだがバームロールも捨てがたいな。ルーベラの繊細な感じもいいよね、持ち歩いたらぐっちゃぐちゃになるの。へー。ブルボンのサイト見てたら、アルフォートも?きどりっこも?キュービィロップも?エブリバーガーやちょこあ〜んぱんまで?!もう私が好きなお菓子ぜんぶブルボンじゃん!無自覚のうちにブルボンと共に生きてきたんだな。ブルボン様様である。今年もさぞかしお世話になるであろう(太る)。
No.619
月が街を照らしてる
人工の光が卑屈に滲む
どちらもきれいだと感じていた
冷たいベランダに裸足で立って
夢の中は静かだった
海に潜ったようで
ひとりなのに温かかった
本当にあたたかかったんです
手に入らないものを
見ているだけで満たされるものを
誰にとってもそうであることを
僕はしずかに分かっていた
昨日は黙っていてごめん
羽毛にまみれて待っていた
唇に残る甘い粉末
この恋が終わるのを待ってたんだ