No.572

ワルツを
ワルツを
誰もいないホールで
キラキラが舞っている

実体未満の感情
打ち明けられなかった秘密
こぼれなかった涙が
満月に引き出されて

輪郭がにじんでる
ぼくから連れ去ろうとする
鮮やかさは奪われて
優しさが最愛を殺すの

そんなこともある
そんな夜もある
ダンスを
ダンスを

誰だって一人で踊る
視線が絡まないよう
迷わず振りほどるよう
淵に来て、ターン

閉じ込めても良い
どこに行かせなくても良い
きみは年をとった子ども
孤独だったぼくが光を編んでつくった命

5+

【雑記】配分と残された時間

根がインドアもインドアなので「やりたいこと」「しなければならないこと」がごっちゃになって配分うまくいかなくなる時が大人になった今でもあって「だめだめだなあ」て思う時と「しあわせなことだなあ」て思う時がある。

どうやら「しなければならないこと」の割合に圧されて「やりたいこと」が消失する人も多いらしい。

なのでもし「まだそんなことやってんの(はまってんの)?」て言われた人とか、あのね、まじで大丈夫、誇りに思っていい、なんでもいいよ、アニメでも漫画でも小説でも雑貨づくりでも創作でもマッチ棒クイズとかパズルとか竹とんぼとかゲームとかカラオケとか石投げとか空想とか円周率とかなんかそういう「お金にならないもの」(って、オトナが思い込んでる類)に今でも夢中でぜんぜん幸せなことだよ。

そう言ってくるひと心底うらやましいんだろうなあって思ってる。

口に出したら「ちっげーし!」て全否定されそうなので心で思うだけだけど、けなしてくる人とか見下してくる人は、無い物ねだりさえも素直にできなくなった人たちなので、いつまでも偏執狂でOKだよ。超嬉しい、ありがとう、て思っておけば。

変なこだわり、意味ないこと(と、多くの人が勝手に認識していること)、(すぐには)お金にならないこと、うむ、万々歳じゃん。

もうそれしか生きる意味ってない気がする、最終的に。

お金って、お金ってね、ほんとうは簡単なんですよ。手に入れるの。間にいろいろはさまって難しくなってるだけで。まあ、はさまってるときでさえ難しいことはないんだけども。見直すきっかけがない。

でも、好きなことや夢中になれることって、一度なくしたら難しいんですよ。

そのうえ、好きなことを続けるにはやっぱりお金が必要で、となると配分をうまくするか、好きなことをお金にかえる努力すればいいのかなって思うけど、ここがちょっと違って、得意なこと・できること、もっとひらたくいうと「他人より苦痛じゃないこと」でお金を稼げるといいんだなあ。

「はー、まじきつい」「むり」「だるい、かわりにやって」「おしえて」

って、他人から言われたことを、自分が(そう?)(それほどでもないけど)って感じたら、あなた、それは見落としちゃいけないことですよ。

たぶん。

最終的に見習うべくは年配の方だと思う。

お金と健康と趣味。
もうほんとこれ。
最終的にこれすぎる。
これには労苦やお金を惜しまない所存。

お金は別としてあとの2つは取り戻すのに時間がかかりすぎるのと、失ってる間のダメージはんぱないからコスパ的な何かが悪いんすよ。どうせ100年だしー。でも100年まるまる残ってるわけじゃないじゃん。今20の人だってさ健康ないがしろにしてたら60とかで寝たきりになったとして、それでもあと40年?きつくね?むりじゃね?

って考えるべきだし、そう考えてる大学生知ってほんと焦る、おねえさん焦った。すっげーなーて思う。老人と若者には学ぶことが多い。つまり、そうか、みんなか。みんな先生であった。

3+

No.571

七年前に買ったレースが今日も窓辺で揺れている。本を、読みたくない。行間が躊躇い傷に見えるから。思い出すかもしれない。あなたに救いはあったんだろうか。町内放送が空に付箋を貼っていく。群れていた小鳥たちが散り散りになって虫を捕まえに行く。たまに付箋に衝突して墜落してくる。深呼吸をひとつ。これだけのために何百年もかかった。瞬きをひとつ。このために千年を超えてきた。どうしてちゃんと分かりやすくしておかないんだろう。見落としてしまうところだった。分かっているのか、見落として、しまう、ところだったんだ。すべて仮定でしょ。狡いんだから。あなたは呆れたように笑っている。この奇跡のためにいくつもの夜を越えてきた。数え方が分からなくなるまで夢を見た。ここも妄想の続きかも知れない。いつだって作り出せる体温は証拠にならない。なかなか醒めない。深い、長い、物語だ。甘い、眠くなるような、今となってはもう、欲しかったかどうかも、分からなくなるような、いっときの風だ。

5+

No.570

そうでもなかった
言っちゃっていいかな
前ほどじゃなかった
そう言っても?

雲と風ばかり流れる
見えない光について書いている
視覚に負けないように
ここにない香りを嗅ごうとして

好きな人の好きだった人の
出ている映画がそこそこ綺麗で
好きになってしまったんだ
あなたが今ようやくわかった気がする

同じふうに見ていられない
その軸はあなただけのものだから
舞い上がるプラスチック片
頭上を覆う枝葉に悲鳴が絡まる

平気でいることができたんです
あなたの愛するものが誰かに愛されていると
悪くないと思えたんです
そしてマグカップに新しいミルクを注ぐ

生きていくんです
死ぬことなんか考えないで
あまりに当たり前でしょう
生きることは死なないことです

もったいないものなんて無いんです
向こう見ずな選択肢は失われた
あなたが素直になれないくらいで
ぼくが支配する何も妨げられたりはしない

3+

No.569

『さよならヒーロー。』

ひとつになりたいですね
ここはあったかいですね

あなたは矛盾をいう
カモフラージュするみたいに

人間ってこういうものでしょう?
愛ってこういうものでしょう?

すがらなくても生きていけるのに
とんだ暇つぶしを見つけたあなただ

まともでいられるはずないんだ
溶け込むなんて到底無理だ

だいじょうぶ、
わたしたちって大丈夫なのよ。

夜空の向こうに宇宙があるって
誰も疑わない星の上でも大丈夫

根拠もないのに
根拠もないから

あなたばかりがまぶしいんだ

よかった、もう、
誰のことも救わなくていいんだ。

1+

No.568

惑星?ううん、ミジンコ。
どうしようか、あまりきみが輝かないのは。
繰り返し再生するうちに違うものを見ていた?
いいえ、勝手に作り変えて恋をしていた。

秘密にしていたせいだ、
誰にも盗まれないように、
あたかも盗まれるもののように、
扱いたかったぼくの弱さのせい。

きみが弱くなったのかぼくが強くなったのか、
きみが白くなってぼくが銀色になったのか、
分からないまま終わりにしたい、
だけど答えがぼくたちを捕まえるんだ。

目をつむって指先だけで、
どこにでも行けたぼくたちだった。
耳がなくても同じ歌を歌えて、
皮膚がなければ溶け合っていたぼくたちだった。

2+

No.567

ここで書いている
この手でちりばめている
句読点は、虫と汗、たまに星、
まんまるで終焉。

夢の続きを書いている
脇道けもの道に憧れている
赤くない命が
耳元で垂れ流されている

高いところから見下ろしている
真逆になる感覚を
味わっている
しばらく喋っていない舌で

きみはレモンを運ぶ
調味料で試そうとする
大丈夫と言えない
味、わかるよ。って言えない

安心が人を殺すの
知っているから
肯定が奪うの
きみのかけがえのない孤独

遠い目をさせて
通じないふりを続けさせて
分かり合える人はいない
だけど信じるものにすがるしかない

そんなきみの願いは祈りより脆い
いつまでも大切に思っていて
大人気ない意地悪をするだけで
いつまでもきみの一番でいられる

3+

No.566

ごめんね
ぼくは同じじゃない
きみの目で見るように
ぼくはきみを見ていない

本当はずっと前からだ
分からなかったんだ
知らなかったんだ
とか、冤罪を訴えるつもりはない

こんなにかなしい
さみしいことをしていた
ふたりもいて気づかなかった
こんなに虚しいことだったんだ

たくさんの好き
たくさんのごめん
たくさんの会いたい
たくさんのずっと

(うそつき、
似た者同士。)

先にきみだったのか
後がぼくだったのか
惰性で抱き合うので分からない
分からないままでいいじゃないか

取り出したキャラメルをしばらく見て
紙に包み直して
箱に戻して
完璧に隠蔽して
キッチンカウンターに置いておく

まるでいなかったみたいに
赤の他人みたいに
出会わなかったみたいに
初めてのように
終わりを知らない顔で

静かに靴を履く
そんな必要ないのに
静かに外へ出て扉を静かに締める
背中で音を聞く、しずかな終わりの音を

タオルケットの中で目を開ける
ぼくがそうすることを知っていた、
きみの瞳はいかにも朝方らしく潤んでいる
これが練習じゃないことに気づいて

利口なせいで、つらいだろうね
敏いがために、痛むんだろうね
ぼくたちは命をかけ合ったから
もしまた会えたら運命と呼ぼうね
あるいは皮肉と

嘆くまでもなく
最善は大抵不幸なんだ
不幸なものほど最善になるんだ
良い道を選びたいんじゃない
忘れたくない痛みでしか覚えてられない

(あのキャラメルに毒は塗ってないよ
うそつきかどうかは食べたらわかるさ
死ぬまで信じ抜けばいいだけ
うそつきを消すにはそれしかないさ)。

2+

No.565

店のショーウィンドウは意地悪な隔たり
一歩間違えば消費されていた側だったの
あなたぼくにそう教えたくてマネキン
に、なったの?不本意でも構わないの?

違和感があるくらいでやめられるほど
子どもじゃないんだ、戻りたくはない
戻りたい場所のある人はとても不幸だ
泣ける、良いでしょって何回も問うの

先に気づいたほうが敗者なんだ
そんなこと分かってる、苦しいはずだ
本当に幸せなら言わないはずの言葉を
本当に愛を知っているなら吐かない唾を

ただ発散したいだけに思えるんだ
あなた繕うことが苦手だけど好きのふりしてる
痛々しいんだ、
どれだけ見透かされているか知らないの

貶めることは簡単かも知れない
だけど窮鼠は猫を噛むかも知れない
ぼくは匿名であなたを愛したい
ぼくは素性不明のままあなたに寄り添いたい

開けるたびに空虚が入っている
無名から放られたいくつもの空虚が
ぼくのかわりに日本に光を投げかける
国旗は燃やすものでなく混ぜ合うもの

泣いても良いよ、慰め方も知らないのなら
逃げなくて良いよ、愛されたことがないから
悪意が何かを知らない幸福にいつまでも
気づかないことを贅沢って呼ぶんだよ。

2+

No.564

もったいないという感情が薄れた時
ぼくは世界を信じたのかも知れなかった
あるいは、自分のことを
あなたが好きだと言った人のことを

始まったものはいつか終わる
なんて嘘だよ
誰が忘れても
誰も忘れなくても
始まったものは終わらない
終わらないから終わりという言葉ができた

夜は何も連れ去らないし
朝は何も運ばない
季節は同じだし命くらい繰り返す
そのことに気づいた
いや、とっくに気づいていたことを思い出したんだ

だから、

忘れることを恐れないでおこうと思った
好きじゃなくなることを否定しないでいよう
夢に溺れる日々ばかりが美しいんじゃなく
傷つけられたことが愛じゃないわけじゃない

それだけで生きていける一日もある。

この柵を超えるのは少しだけ勇気がいる
ただしそれは少しだけだ
あることとないことの間に差はない
本当は、大きな差なんて、どこにも

冬の砂浜で見つけたビニール袋が
ぼくの日常に光をこぼしてる
あなたもきっと私のようになれるよ
ああ、これを絶望感と言うんだな
幸福そうに言ってくるきみを指して思う

豚を食べた
牛とひよこを食べて花を摘んだ
死骸の上に置いた石に供えて
行ってきますと告げる
紺色に染まる頃にきっと戻るねと告げる
ありきたりな星をきみが見上げるその前に

4+