No.554

器用でも不器用でも
何も残せない
何も作り出せない
だから言葉を紡いだ

唇があって舌があるので
心があって思いがあるので
伝えたくないことも
伝えたいことも

夢にまで見ました
現実かに思えました
さわれないから優しいのに
とどかないから欲しいのに

なんにも落ちてきてほしくなった
ずっと遠くで見ていて欲しかった
接近すれば危うくなるだけ
仕切り直しに月下でさよなら

瞬きをしたら忘れる
きれいさっぱり赤の他人
おまじないを掛け合うのに
どちらの目からも涙がこぼれる

3+

No.553

目を覚ましたくなんか
なかったのに、ちっとも
そんな目でぼくをみる
夢かそうじゃないかって

誰にも判定のできないことだよ
錯覚は救いだ
雪の上の花かに見える
血を流して倒れていても

うまく生きられない
ずっとそうだったんだろうね
これからもそうなんだろうね
そう思うことで安心がしたいね

永遠に続くものはない
永遠だって永遠じゃない
そんなものどこにもない
繋がらないでも温まりたい

願望を口にするのは
叶わないことが明らかな時だけ
あなたは裏切り役を忌避する
揃えたつま先にだけ陰ができる

光があればあるほど
明るければ明るいほど
温かければ温かいほど
その暗闇は隠しようがないのに

2+

【雑記】ただパソコンの話してるだけ。

iMacにウィンドウズ10入れるのに成功した!結論から言うと非常に簡単。途中で「んっ?」てなったけどライセンス入力せず進めてただけ。ミス。かかった費用は新規ライセンス代17,000円。新たにPC買い足すより経済的だったな。場所もとらないし、よかった買わなくて。iMac電源入れてマックかウィンドウズか選択可能で作業途中での切り替えも可能。これでMMDできるぞ。インストールできなかったあれやこれや、諦めてたあれやこれやもできるぞ。…って事態になると途端に何もしたくなくなるのは人間のサガなのか己のサガなのか。こうやってみんな死んでくんだろうな、やろうと思っていた、いつか取りかかろうと思っていたんだ…って言いながらな…。強いて言うなら画面の解像度しっくり来ないところあるけどまあ許容範囲内かな。やはりMacは優秀だった。#結論。自我が芽生えた頃から?ずっとウィンドウズだったけど何が優れてるってMac製品は型落ちしても価格がそれほど、馬鹿みたいに落ちていかないことですな。メルカリ見てても「へー」て値段で売買されてるしそういうのウィンドウズにはなくない?知らんけど。次に欲しいのはAirPods。新型の噂あったけど別に気にならないからもういいかな。まだっぽいし。こうして生活がリンゴに囲まれていく…。

2+

【小説】『箱と毒』2

この話の続き。続かないと宣言したら続けたくなる病。当初からのキャラ崩壊と伏線回収気配なくグダグダに進む様子をお楽しみください。どうせメロメロになる(恒例)。もし今後続くとしても、伏線めいたもの、設定、キャラすべての呪縛から解き放たれてただ書きますね。

=

▼15秒でわかるひどいあらすじ。

美形のモテ高校生のキラくん(17♂)は同じクラスのフツメンだけど黒目キラキラなシバちゃん(17♂)が好き。最近になってシバの魅力にみんなが気付き始めたように思われて(勘違い)、とりあえず癪に触るから、シバに対する悪い噂(シバ、家で小動物殺してるってよ)を流して不登校に追い込む。何食わぬ顔をしてシバの家に宿題を持っていく偽善者ぶりを遺憾なく発揮。罪悪感、薄。そんなある日のこと、シバが好きな子の存在を匂わせて…?!(作者)どきどき(回収できない)ハイスクールラブ★

=

『箱と毒』2

どれだけ足しても致死量にならない。夢のような猛毒。間違いが起こらない。俺のものにしたくて、だけどできなくて、どんなに余っていても不足を感じる。矛盾ともどかしさ。この毒は、そんな毒。飲まされる方よりも使う方を苦しめる。

女子の買い物に付き合った時、化粧品に試供品があることを知った。これ自由に使っていいのよ。え、これ無料で使えんの?あはは、何それ。笑うとこ?俺おかしかった?おかしい、てか、キラくんなんか疎いよね。今風に見せかけて実は古風みたいな?は?俺めっちゃ敏感だけど?人の気持ちに対してとか。うそうそ。嘘じゃねえし。てか、ここにあるやつ全部無料で使えんの?女子ちょうお得じゃん。

あはは。

よく笑う、あの子は、まあ、かわいかった。俺に好きって言ってこなかったから。たぶん。気が楽だった。あ、言わないんだ、って思った。目が言ってんのに。全身が言ってるのに。言わないんじゃなくて、たぶん、言えない。そういうとこ、いいなって思った。悪意も善意もなくて。俺は勝手に共感してた。

わかるから。

恋愛にテスターがあるとしたら、今がそれなのかなって、二次方程式に頭を悩ませるシバちゃん見てて思う。今日も黒目がうるうるしてる。水分がいっぱいあるんだな。伏せ目がちなことが多いからかな。

「シバって、母親似?」。
「え、なに急に?」。
「あ、いや、その」。

俺がうろたえているとシバちゃんは怪訝そうだった表情をふいに崩してプハって笑う。

「どっちかって言うと父さん似かな?」。
「あ、そうなんだ」。

シバちゃんの父親に会ったことは、まだない。ないけど、黒目がウルウルしてる中年男性を想像して首をかしげる。上手く想像できないや。

「ねえ、学校来なくなったのなんで?」。

しらじらしく聞いてみる。犯罪者は犯罪現場に戻るけれど、俺はシバちゃんに真相を尋ねる。

「うーん、なんか、みんなが急によそよそしくなったっていうか。おれが勝手にそう感じてるだけかもしれないんだけど」。
「なんか、嫌なこと言われたり聞いたり、した?」。
「それは無い」。

ああ、よかった。バレてないや。
俺が、シバちゃんについての悪い噂を吹聴した、張本人だってこと。

「だから、おれの、思い込みってやつ」。
「……そっか」。
「あっ、でも、キラは変わらなかったかな!」。

シバちゃんはあわてて付け足した。
書きかけのノートから勢いよく上げた顔が間近にあってビックリした。俺が近づきすぎてたのか、シバちゃんが身を乗り出したせいか。思わず仰け反って「な、何が?」柄にもなくどもってしまう。どもる。俺が?へえ。いつも平然としてて余裕綽々で他人のペースに飲まれないことをモットーとして17年間生きてきたこの俺が。はい、この俺が。ですよ。革命。

「みんなの態度が冷たくなってから、てか、おれが勝手にそう感じ始めてからも、キラはそれまでと同じく接してくれて、」。
「接してくれて?」。
「嬉しかった、って言うか」。
「……あ、はい」。
「だから、おまえはモテんのかな、って」。

シバちゃんは自分の言葉に照れた風にフニャフニャ笑うと元の位置に姿勢を戻した。

モテてて良かった。

心底、これほど、自分が自分であることをめでたく感じたことはなかった。今まで女子の声とか呼び出されんとか正直うぜえって、思うこともあったし、思いの丈をぶつけて勝手に悦に入ってんじゃねえよって思うこともあったけど、本当にご馳走様でした。シバちゃんのこんな顔を見られるなら俺はこの先何年でもモテていたいしたくさん告白とかされて女の子泣かせていきたいなって思いました。正直。

「シバは好きな女子いないの?」。

うっかりそんな質問を漏らしてしまった。確かに頭では常々思ってたことだけど、まさか口に出すとは夢にも思わなかった。だから、シバちゃんが「えっ?」て驚いて少し顔を赤くした時に「はっ?」って声を上げてたし、気づいたらがっしりと両肩を掴んで今にも揺さぶらんとしていた。

「なに?いんの?!」。
「……ご、ごめん」。

つい謝っちゃうシバちゃん激かわ。天然かよ。
じゃなくて。

「何年何組?名前は?はあ?いつから?信じらんねえんだけど!」。
「……え、キラに言わなきゃダメ…?」。

頬っぺた赤らめウルウル上目遣いで「ダメ?」ごちです!じゃ、なくて。

一呼吸。
まず落ち着こう、俺、な?リアクションあやしいって。

「シバって、そういうの興味ないかと……」。
「あー、うん、自分でも不思議」。
「不思議とは?」。
「その人のこと見てたら、もう、いいかなってなる」。
「なに、もういいかなって、どういうこと?」。
「色んなことが、どうでも良くなるんだ。たとえば、明日の天気とか。試験の結果とか。運動音痴なこととか。進路のこととか。嫌な目にあっても、嫌なニュース聞いても、その人がいるなら、世界がチャラになるっていうか」。
「悔しいけどすごい分かる」。
「ほんとかよ?キラと共有できる感情あるとか思わなかった」。

シバちゃんはどんだけ俺を高みに置いときたいんだ。はあ尊い。

「……シバ、それって俺も知ってる子?」。

訊いてどうすんだろ。
考えてないけど、まあ、とりあえず?

「うーん、うん」。
「何それ、どっち?俺も知ってる?知らない?」。
「……キラも知ってる」。

その回答で俺の体と頭がスッと冴えた。
まったく知らない相手なら難しいけど、もし知ってる相手なら、なんとかなるかも。シバちゃんの恋が実らないよう、手回しできる、かも。

「ねえ、シバ」。
「え?」。
「俺、毎日宿題持ってくるよな?」。
「あ、うん、ありがとう」。
「授業の内容も教えてるよな?」。
「えっと、うん、でももし苦痛ならやめてくれてもい、」。
「じゃ、誰か教えて」。

強気で攻めるとシバちゃんの目が左右に揺れる。
やばい、かわいそう。困ってる。俺のせいで。ああ、かわいそう。かわいそうでかわいい。
なんで俺シバちゃんの存在に気づいちゃったんだろ。

「イニシャルで良い?」。
「は?いくない。フルネーム。当然」。

墓穴。墓穴。墓穴。
俺の頭の中で呪詛がエコーする。

「……ミヤジさん」。

俺の頭上で空爆が起こった。
ずるい。ずるい。ずるい。
シバちゃんにこんな顔させるって何様だ?
空爆は一瞬で、すぐに恐怖に似た寒気が押し寄せてきた。
ありえる、と思ってしまったから。
たとえば、学年一番のかわいい子とか、一個上の美人な先輩だとか、言うならまだ分かる。シバちゃん、女性経験なさそうだし、そういうわかりやすいほうに惹かれるってんなら、まだ分かる。だけど、ミヤジは、あかんやつ。まるで本気やないかーい。俺は少し錯乱している。

「ミヤジ。どんなとこが良いんだ?」。
「え、あー……」。
「なんかあんだろ。顔とか、声とか、性格とか。何もねえってことはねえよな?」。

つい詰問口調になってしまう。

「えっと……優しいとこ……?」。

優しいとこ?って、疑問系かわいいかよ。俺は真顔を保つのに必死だ。

「地味なだけじゃね?」。
「そうかな」。
「じゃさ、ミヤジが一回でもこの家に来ましたか?シバが休むようになってからいっぺんでも宿題運んだり授業遅れないよう計らってくれました?」。
「ないけど」。
「でしょ、じゃ俺のほうが優しい!」。

決めつけるように言い切ってから、しまったと思った。俺、動揺した。俺、取り乱した。
シバちゃんが、プハって、笑ってくれたから良いけど。
「なんか、キラって、王子様みたいなやつかと思ってたら、犬みてえ」。
「……いぬ」。
「嬉しそうになったり、なんかいきなりワタワタしたり。いろんな表情あるんだな。おれが持ってたキラのイメージと少し違う」。
「……それは悪かったな」。
「ううん、いいと思う」。

いいとおもう。
iitoomou.

つまり、シバちゃんは、俺の事が好き。と。なるほどー。

は、無いにしても?概ねそういうことでよろしいんじゃないでしょうか?!

ってくらい、はあ骨抜き。

好き。むり。しんど。ちょう好き。

シバちゃんといると、新しい自分が発見できる。しかし、ミヤジ。ミヤジかあ。うーん、ミヤジ、俺みたいなの嫌いそうだからな。そうじゃなければ早々に手を出して「ごめん、シバ。実はこないだミヤジに告白されて……いや、こんなのわざわざ言うことじゃないかなって思ったんだけど、シバの気持ち聞いてたし、黙ってんのも気持ち悪くて……だから、ミヤジは、諦めろよ」(意訳:俺にしとけ。)なんて手は使えそうにないし、どうすっかなーあ。まあおいおい考えましょう。ミヤジにシバちゃん。幸いにもお互いに行動力は無さそうだし、万一の確率も限りなくゼロに近いだろう。その点は安心しといていいかな、と。

俺に秘密を告白したシバちゃん、まだ少し頬っぺたが赤い気がする。いつか俺のことを考えてる時にこんな顔するようになってくれたらいいなって思う。心から、ほんと、心の底から、そう思う。

邪魔するやつとかみんな消したい。

2+

No.552

明方に夢想する
これは誰かの夢じゃないかって
光を孕んだ
闇は静かに駆逐される

目に届くだけじゃない
あたためるために
太陽が昇って
なけなしの寂しさを拭う

遠いどこかで
あなたも見ているといい
分け隔てないこの空を
そして不自由に気づくといい

僕たちに与えられた程度に
真相は雲のように形を変えて
それぞれの感情も留まらないって
変わらないことを誠意と呼ばないで

僕が手放したもの
あなたが手放したくなかったもの
それだけで十分
本当はそれだけで十分なことなんだ

隠し事は川底から引き上げられる
かつて命だったものの形をして
大人になるなんてずっと先のことだった
僕たちは見つけて覗き込んだ

単なる死骸がどうしてあんなに
周りの風景を掠めるくらい
呼吸を忘れるくらい鮮やかだったろう?
かつて生きていたからだとは気づけない

夕日を照り返す五臓六腑
僕たちは言葉を分けた
通じるのに通じない
それよりは幾許かマシだろうと

日に縫い目などないように
変わりゆく僕たちにも嘘偽りがない
それほど高度になることはない
いつまで経っても覚束ない

死者ばかり美しいか
そんなわけはない
どちらからともなく始めた遊戯
生きている者にも手向けの花を

運命のように出会ったこと
忘れても染み付いている
こみ上げる涙は取っておく
百年後に来る再会のために

2+

【雑記】ばいばい、ホームボタンちゃん。

iPhoneからホームボタン無くなるのか。Gizmodoのこの記事好き。物理への安心感、帰路への保証。まさにそれ。物理も壊れるときは壊れるのになんだろうね。時代が変われば物理に拠り所を求めなくて平気な世代が出てくると思うと急に年寄りじみた気分不可避。
そういやiMac使い始めてしばらく経ってから遅ればせながら驚いたのは「意外と使えない」ってこと。マックが使えないと言うよりマック非対応のソフトがあまりに多かったということですな。マックはいいんだけどウィンドウズ優勢過ぎてその状況を調べもせずiMac買ってやったぜうえーい★てなってた自分情弱すぎる。なんかイメージない?マック=なんでもできる。っていう。マックでできることは大体ウィンドウズでもできる。でも逆がないこともある。ウィンドウズでできてマックでできないことは多い。むー。こうなったらiMacの隣にウィンドウズPC置こうかな?!トレーダーの部屋見たくなるけどな?!っていろいろ調べてたらすっげーいい話きいた。それは、マックパソコンで仮想ウィンドウズ環境つくることであった。あーーーなんで知らなかったんだ。やばい新たに買おうとしてた。マウスとキーボードとデザインはマック好きだから、でも中身はウィンドウズが慣れてて…ってキメラ的展開なんとかなりそうで良かった良かった。…なんとか、なる、んだよな?とりあえずやってみる。そしてさ驚いたのがそもそも若者はパソコン持ってないってことですよ。いや、普通の若者がスマホで満足、事足りるのは分かるけど3D動かしたり動画編集までスマホでやるってほんとか。もうね、おじいちゃんびっくりしたわ。そうはいってもやっぱりパソコン欲しいなーって声が多数だけどそのうちさ、それこそもう物理デバイス消えるのではないか。頭でイメージしたものがそのまま他人や公共と共有できるようになるの。ドラえもんの世界にあった気がする、考えが吹き出しになって他人にさとられてしまうやつ。ほんとサトラレの世界だよ。そしてそれを取り締まる法律とか守護的な立場の人や組織が出てきてみんなわーいってなったらそいつらが実は黒幕で国家転覆をもくろむ悪の組織でその上層部と情弱庶民のBL読みたい。「俺にはおまえの考えなんか手に取るように分かるんだからな…ククク」って悪役攻めの脳内に屈託無い受けの好き好きオーラが雪崩れ込んできて赤面するのかわいくない?自分への誹謗中傷にまみれてると思ったら好き好き大好きメッセージがだだ漏れで許容範囲オーバーヒートのほっこりはん。うーん、どうだ、どっちがいいか?どっちがいいと思われますか?攻めの脳内に受けの思想が雪崩れ込むのとその逆では?砂原糖子さんの小説で似たようなのすでにあったな。設定違うけど相手の考えてること流れ込んでくるやつ。しかし不便性の風流ってあるよね。ある程度のめんどくささや障害がストーリーの要ってやつ。スマホの登場で消えたトリックや不可能になった設定っていっぱいあるじゃん?「え、スマホ使えば万事解決じゃね?」みたいなの。テクノロジー発展の陰では陽の目を見なかった多くのストーリーがあることにも思いを馳せて欲しいなと思うこともありますし思いを馳せたりするんですよ。暇人ではないですよ、毎日めっちゃ忙しかったり昼寝したりはまあしてますがね。

はあ。秋めいてきた。

1+

No.551

欲しいもの
禁じられている
蒸留されて
宝石になるために

きみは手を伸ばす
その手で支えるんだ
支えられていると思っていただろう
きみなしで夢はこの世に居られない

目を覚ますたび無色の光が
からだいっぱい満ちてきて
おはようを言ってくる
昨日のことなんか忘れたみたいに

何度も逃げ出したのに
びくともしないで
枕元にある
不安を食い尽くしてかがやく

たまに思い出すんだ
思い出すことを忘れないよう
手のひらに浅く彫ってある
きみもいつかいなくなるって

何も特別なことじゃない
特別は特別に埋もれて日常になる
だからって平然とできるわけじゃない
生まれながらに贅沢なんだ

なのに不思議でたまらない
きみたちはまるでこう生きる
百年後も千年後もここにいるみたいに
何食わぬ顔で他人を傷つけ他人を欺く

きみたちの一生は花の一生だ
無知が癒しであることの認識すらないまま
素直になることを放棄する
それでいて何もかも知ったふうに笑う

喧嘩している間にも
沈黙を保っている間にも
時は刻まれる
残りの明日は減っていくのに

手遅れになんないように
あとで泣いたりしないように
ぼくが今きみを愛そうとして
好きだって言うと急に泣いたりする

やわらかくて弱い者、
ちいさくて賢い生き物、
きみがぼくを慈しむ時
ぼくはきみの集めた幸福にさらされている

1+

No.550

ここはあまりに色彩豊かで
どんな夢も生きてられない
誰も見ることがないならば
あなたが忘れてしまうのならば

太陽は同じ場所でリセットされた
ある人はそれを恨んだ
ある人はそれを幸せだと言った
抽斗の剃刀がひとりでに血を流す頃

まだ見ぬ接続口を探してる
仮面のままぬくもりを探してる
ぼくもまた人間ですと証明したくて
人間にだけはなりたくなかったのに

密室でカレイドスコープ
(肉体は連れていけない)
想像のプラネタリウム
(あなたが粒子に戻るまでは)

なりたかった?
なれなかった?
いいや、なろうとしなかった
それが真相、それは秘密。

何回殺した?
(何回でも)
何人死なせた?
(ぼくばかりを)。

2+

【小説】『箱と毒』

1つ前の話のちょっと前の話。気まぐれに続いた。けど、これ以降は続かない。独占欲強め病み美形人気者→自己評価低め庶民派無自覚地味メン。性癖です。BL風味?展開(といえるかな微妙?)。

額に書いてあったらいいのにな。自分とその子がうまくいく確率が。そうしたら誰も間違わないだろ。おれを好きになる女の子みんなかわいくてかわいそうだよ。だっておれはその子たちを絶対好きになんないから。だから、分かればいいのになって思う。そしたら誰も傷つかないし、誰も傷つかない世界を望んでる自分なんてものに罪悪感を覚えることもないだろうに。不可能性の高さで恋愛対象に選んでるなんて思われたくない。おれの好きな子は絶対におれを好きになることはなくて、でもそれが分かるからおれはその子を好きなんじゃない。できることなら好きになって欲しいと思う、でも、そうなったらそうなったで手を取り合ってさあ、次はどこに行く?って光景も想像できなくて、それはまだおれが臆病で自尊心を大事に持ってるってことの証明になるのかな。

みんなと一人ずつ愛し合えたらって思う。ほら、体育祭のフォークダンスみたいに。一人ずつね、平等にね、音楽が鳴り止むまで。

好きです。ずっと、好きでした。って、そう言われておれがどんな気持ちになると思う?腹が立って仕方がないんだ。だって気持ちを伝えたんだろう。おれはできないのに。おれには、できないのに。だから返事はそっけない。ありがとうとも言わない。ごめんねとも言わない。ただ、ふうん、って言う。だって、他に言いようがないから。おまえたち、ほんとずるいよ。好きな相手に好きだって言って、これだけ好きだったって言って、時々黒目をうるうるってさせる、そういうの、ほんとずるい。おれがどんなにひどい言葉を投げつけてふったって事情を知ってる友達が慰めてくれて時間がかかっても次の相手を好きになれるんだろ?切羽詰まってないんだ。にこにこ笑ってる顔に肉片ぶん投げてやりてえとか全部秘密にしたいからありったけの目を潰してやりてえとか錯乱する夜はあった?せいぜい裸とか制服以外の格好とか体温とか想像して勝手に幸せになれたんだろ。

内面がどれだけどろどろでもすべて封印してにこってできるのが小さい頃からのおれの数少ない得意技であって、でも汎用性があるからすごく多くのひとが錯覚してくれるんだ。おれがほんとはどろどろだって最初に気づいたのがシバだった。

「なんか、おまえに、殺されそうな気がする」。

さいしょ、シバちゃん、おれにそう言った。まだ会話らしい会話もしてないのに。目が合っただけなのに。なんで?なんでなんでなんで?正直焦った。なんで気づいた?でも、いや、落ち着け。待て。シバちゃんは「おまえに、殺されそう」って言ったんだ。おれの気持ちはちっとも見抜かれちゃいない。ていうか、逆。殺されそうとか言っておきながらシバちゃんはおれと一緒にいてくれることが多かった。シバちゃんの目はいっつもきらきらしてて雨の日の子犬みたいで捨てていきたいような拾いたいような気持ちにさせる。だけどシバちゃんは普段メガネをかけてるから誰もそんなこと知らない。だってシバちゃんはあのクラスでは透明人間だもんね。正直おれにも見えてなかった。おれのまわりには常に、いいにおいのする女の子や、声のおっきい友達がいたから。シバちゃんは無味無臭。いじめられてるわけじゃない。だあれも気づいていないだけ。だけどおれが気づいたんだ。おれが気づくってことは周囲がじょじょに意識し始めるってことを意味する。

案の定、教室で、シバちゃんの存在が少しずつ色を帯びていった。女子も男子もシバちゃんをおもしろがりはじめた。「シバくん、いつも何読んでるの?」「シバ、サッカーする?あ、やんねえの」「バイト先に遊びに来てよ」「シバ、宿題見せて」「シバって、どこに住んでんの?」たしかに、色を、帯びていった。「あ。なんか、シバの目って、なんかきらきらしてんなあ」。

やばい限界むり。

教室が静まり返っていた。一瞬何事かと思ったけど、どうやら俺の行動に起因する静寂だったらしい。「びっくりした、おまえいきなり椅子蹴るから。びびったんすけど?」。一緒にいることの多い男子の一人がそう教えてくれなければ、おれは自分のしたことさえ思い出せなかった。

翌日からおれは明確な意図を持ってクラスで立ち回った。高校入学依頼始めてあれほどやりがいのある「目標」を見つけた。ほどなくしてシバは学校に来なくなった。いや、来られなくなった。おれがそうなるように仕向けたんだ。

「あいつ、小動物を解剖するの、趣味なんだって」。

それだけ。ほんとそれだけなんだ。

シバが学校へ来なくなって数日経った放課後、おれはシバの家の玄関前に立っていた。表札を眺めながら立ち尽くしていると、シバの母親が買い物から帰ってきて家へ招き入れてくれた。シバと違っておしゃべり好きで、よく笑う人で、なんだか申し訳なかった。

「あの子にこんなかっこいいお友達がいたなんてねえ」
「……あの、シバくんって友達いますか」

言ってから、しまった、と思った。
だけど、シバの母親は明るい人だった。

「小学校低学年くらいまでは調子良かったんだけどねえ。……あ、あの子には内緒ね」

内緒も何もねーだろ。ってくらいの声量だった。

「シバ、入るよ」

まさかこんな展開に。ってくらい、予想はしていなかった。郵便受けに宿題プリント突っ込んだら帰るつもりだったのに、こんなところまで。
シバの母親に後押しされるような格好でおれはシバの部屋に入った。

数日。たった、数日か。ほんとに?数週間でも、数年間でもなくて?本当に?

シバの姿が目に入った瞬間、大袈裟でなくおれは泣きそうになった。ごめん、って、一言漏れる。贖罪にもならないのに。だけどシバは意味を取り違えて「……あー、いいよ。だいじょぶ。本読んでただけだし」。

「ごめんな、母ちゃんがはしゃいでたろ」
「あ、いや。歓迎してもらって、嬉しかった。てか、すごい明るい人だな」
「うん、面食いだから」

ん。てことはシバはおれをイケメンだと思ってくれてるのか?単純なことに気分が高揚した。

「シバ、学校来ないの?」
「なんか行きづらくなって。何がってわけじゃないんだけどな」
「そっか。無理するなよ」
「うん」
「勉強とか、おれが、教えるし」
「え。マジ。助かる」
「シバが迷惑じゃねーなら」
「いや、おまえこそおれの家なんか来てて大丈夫?ハブられたりとか」
「気にしない」
「あー、でもありがたいけど、行けたら行くようにする、学校」
「ゆっくりでいいと思う」

この事態を招いた張本人を前にシバは無防備だった。そしておれも無防備だった。すらすらと善意の言葉が出てきた。そのうち、シバがこうなったのはおれのせいじゃない。と確信できるまでに至った。だって、あいつらがおれなんかに乗せられるのが悪いんだ。自分の意志もなく、おれが言ったことに同調して。どうしてシバを信じてやらないんだ。シバが、おれの言ったような残酷なこと、するわけない、だろ。それくらい、わかれよ。

「てか、シバ、家ではメガネしないんだ」
「あー、うん。あれ伊達。自分の世界に没頭しやすいから」
「なんかわかる」
「え、そう?おまえには理解できないはずだけどな」

自分の言葉にシバは、へらっと笑った。

あの日教室で椅子を蹴った時より強い衝動が自分を襲った、と思った。あの日と違うのは、自覚があったこと。そして、それを、自制できたこと。

「おれ、シバが好き」
「そう?ありがと」
「ほんと好き」
「え?なにそれ。感性おかしいの?」

こんな話を聞いたことがある。実話か小説か。本で読んだのか、ネットで見かけたのか。
病弱な妻を看病する夫は、妻の食事に毎回少量の毒を混ぜる。愛する妻が、決して回復しないように。それでいて死なないように、ただ弱らせて、家に留めるんだ。
この話はどんな結末だったろう。それとも、この話自体が、おれの、空想かな。

「ゆっくりでいい。ほんと、無理だけはするなよ」
「べつに、病人じゃあるまいし」
「そっか、そうだよな」
「そうだよ。おまえがおれなんかに過保護になんの、なんかもったいねえよ」

ここでシバを押し倒してみる?いやいや、絶対にありあえない。今このタイミングで、もっともしてはいけない行為だ。おれはふと、これまで自分に告白してきた女の子たちの顔つきや表情を思い出す。不安そうだった。思いつめていた。それでいて、ようやく感情を発露できて、恍惚としていた。のろい、かもしれない。少し、そう思う。誰に対しても、共感を示さず、冷徹に、振り払ってきた報いだって。でも仕方がないよな。同情で回答するものでもないし。ほら、平等なフォークダンスだよ。言っただろう?おれの前にシバが来たんだ。それだけだ。音楽が続くうちはローテーションが止まらないなら、おれは停止ボタンを押してやる。そして二度と音楽が流れないよう、致死量未満の毒を、少しずつ少しずつ、逆光でいっぱいのこの部屋に住むこの体に流し込んでく。

2+

【小説】『平成のシバちゃん』

夜空に大輪の花が咲く。
無数に、あたかも無数であるみたいに。
燃え尽きなかった火の粉が空からパラパラ降ってきて木とか建物が燃え上がってそのうち大火事になって世界まるごと燃え尽きちゃわないかなって妄想が頭をぐるぐるする。

「シバちゃんと見られて良かったよ、今宵、平成最後の打ち上げ花火を」

どうせ聞こえないだろうと思って呟いたのに「そうか?」なんて情緒のない返答がある。言ったこっちが恥ずかしくなって「つまんなかった?」。

「べつにつまんなくはないけど」
「けど?」
「なんかしっくりこないなと思って」
「どういう意味?」

だってさ、とシバはおれに向き直って言う。教鞭のように突き出されたじゃがりこをぽりぽり食い始めると一瞬だけ嫌な顔をされたけど取り上げられることはなかった。

「だってさ、おまえは彼女と別れて仕方なくここにいるんじゃん?」
「そうだっけ」
「そうだったろうが」

ぺちっ。シバちゃんがおれの頭を叩くためには少し背伸びしないといけない。律儀に頭を叩いてくるのだから可愛い。

「おれは最初からシバちゃんとここに来たかった気がするんだけどなあ」

褒められることは数多あれど貶されることはほとんどないスマイルを浮かべると「都合のいいやつ」「二枚舌め」「たらしが」などと散々中傷された挙げ句「ま、いいけどよ」。許してもらえた。

今年ももう終わるね。
いや気が早いし。
夏が終わると一気に坂を駆け下りてくようだったじゃん?毎年?
おまえの時間感覚なんて知らねえけど。
もう年の瀬か。
うーん、頷きかねる。

舌の上ではじける炭酸みたくパチパチ瞬いてた花火を人差し指と親指の間につかまえてプチッと潰したちょうどその時、ふっと世界中から光と音が消えた。ふたり以外の。

「99.9%」。

おれの言葉に、シバは「何が?」とこちらを振り仰いだ。

「おれとシバちゃんがうまくいく確率」。

シバは心底不可解そうに視線をさまよわせた。何言ってんだこいつ?って顔に書いてある。子犬みたいに黒い目がきらきら光ってる。光なんてないのに。きらきらって。
ああ、いいな。
見上げてくるシバちゃんの目にも、シバちゃんを見下ろすおれの目が、少しでもきらきらって光って映っていればいいな。
シバちゃんは見たことないんだろうな。シバちゃん自身の目が、こんなふうにきらきらって輝くところを。
シバちゃんも知らないのに、おれだけが知っている。おれだけが許されている。おれだけが、おれだけが。なんて贅沢。なんて至福。なんて恩寵。なんて、なんて。

「シバちゃん、あいわらず鈍いんだから」
「悪かったな」
「それとも、わざと?」
「何がだよ」
「な、わけないか」
「いやだから何がだよ?」

クライマックスは絶好のチャンスだって、子供の頃、いとこの兄ちゃんに聞いたことがあるんだ。もう地元にいないけど。みんなが空ばっか見てるだろ。だから、絶好のチャンスなんだよ、って。

「ねえ、シバちゃん。来年も一緒に見ようね」
「どうだろ。それはお前次第だな」
「じゃあ100%だ」

忘れかけてた音が始まる。
空は防弾ガラスのように強固だ。
でも、たまに、不安になる。
思いがけず割れて宇宙の外側がどろっとこちらの世界へこぼれてきてしまったら?
しかも、一瞬のことじゃなくて。
時速5キロの速さで、のろのろのろのろと。むこうの世界が流れ込んできたら?
術はないのに時間が中途半端に与えられて。
その時おれは何ができるんだろう。その時おれは何を救えるんだろう。
少なくとも、せめて、できることなら、シバちゃんに軽蔑されたくないな。
できるんだろうか。
わからない。
でもそれって考えても仕方がないから、1秒でも多くシバちゃんを構う。

「じゃあ100%」。
「いや聞こえてたから。なんで2回言ったの」。
「大事なことだから」。
「わけわかんね。きもちわる」。

だけど、こうまで鈍いシバちゃんも、それはそれで捨てがたいや。

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