【雑記】嫉妬があれば大丈夫。

私はそんなに嫉妬深い方ではない。
と、自分では思うけどどうだろう。
少なくとも自分では嫉妬深くない、と思っているけどコンプレックスになりそうな人や物を避けているのかも?無意識に。

だけど、たまーに「…ふーん…(あれ?イライラしてんな?…なんだこの気持ち…もしや…Sit!?)」な時があってそれたぶん正解。

そういう時って今まで「汚い。醜い。打ち消し」とか「自分は自分。他人は他人。はい終了〜」って強引に幕引きしてなかったことにしてたんだけど、いや待てよ。嫉妬やヤキモチって、そんなに悪者か?

そいつらってつまり「うらやましい」って言ってるんでしょ要するに?

じゃあ、羨ましくないように自分のものにする努力や行動をすべきなんじゃないかな。

それは自分がそれをどんなに望んでいるか、いたか、を教えてくれるわかりやすいメーターみたいなもので、ふっと湧き上がって来たらそれ好きで大好きでたまらないって意味だから安心して受け入れればいい。で、じゃあ自分はどうやったらそれを手に入れられるのか?を真剣に考えて行動してみればいい。

うまくいかないかも?どうだろ、いやー、大丈夫でしょ。だって、イラッとしたんでしょ?じゃあやれるんだよ。どうでもいいものにイラッとはしないでしょ。そういうことなんだよ。

自分が出してくるメッセージって一見違うものの形してるからややこしいけどそこで「おっ、いまなんか出てきたぞ?どれどれ、どうしたいんだ?」ってちょっと立ち止まって本心をさぐることをしてると、なにかが少しずつ変わってくる感ある。

嫉妬があれば大丈夫。

3+

no.351

この賭けに勝つことに意味はない
思い出すのは水の音ばかり
このまま
このままで
いつか見つかるまで続けてしまう
命を
死なないことを
祈りに似ることはないのに
地を這って
空に広がる青の名前も知らないのに
忘れたことを思い出すように繰り返す
初めてにあこがれて一人芝居だ
ぼくを見るあなたはいつも笑顔だった
あなたをそうさせた何かが
この体に宿っているのだとしたら
使い道はまだ残っているのかも知れない
砕けて、散って、形を失っても
悲鳴の起こらない世界でどうか、
どうか
ぼくとあなたに似た何かが
またしずかに始まりますように
そうしたら
名前のない青で存在をいっぱいにして
なにも信じられなくても生きられるように

5+

no.350

戦いの途中でふと思った。もうやめたいんじゃないかって、ぼくはこれを、もうやめたいんじゃないかって。振り下ろす刀の前に敵はない。満月だって半分にできた。溶け出した卵の黄身はこんなところに隠れていた。飲み干した姿を湖面が見ていて獣みたいだった。名前のつかないうちは傷もつけられなくてだからたくさん瞳を見たよね。だって君たちに教えてあげたかった。ここじゃないんだよって。もちろんそれはぼくのひとりよがりでそんなこと続けていればいつか誰もいなくなるって簡単にわかることだよ。泣いているのかなと思ったらさっき付着した血のぬくもり。生きているものから逃れられない。もう一度ファンファーレが聞こえ、殻を破って生まれるぼくがまた同じことを繰り返す劇場。囚われのさよなら。一口分のスラングより軽いばかりの。もういいや、何度だって始めちゃえ。反旗まがいを踏み倒し。

2+

【雑記】うそに殺されないために。

世界は簡単にきみのもの。

ひとつの教訓、ひとつの事件は。手癖でリリカルにもちこむことも、えらそうに自己啓発っぽくあたかも実践的な方向に持ってくこともできて、どっちが届くのかな。自分なら自分にどう言って欲しいかなってたまに考えるから少し変化したんだと思う。あたりまえっちゃあ、あたりまえだ。変わっていないわけないよ。これまでは「ねーねー書いたよ!読んで!」っていうあのねあのね精神だったけど、読んでる人を想像するっていう当たり前のことをふと意識したらどうなのか、とか。一気に答えが出るものじゃないけど。というか出す気は、ない。

人への気持ちや愛なんていうものはすべて相対的なものではないかと思ったんだ。身近な人から厳しく接されることが当たり前になっていれば、ちょっと優しくされただけで「えっ」ってきょどるから感受性マックスなんだよね。良くも悪くも。なので、絶望しまくれるうちに絶望しまくるのもいいんじゃないかなと思う。絶望を感じる状況に落ち込めるのもまた才能のひとつだから。

そりゃマリオのスターみたいに無敵がいいよね、タフになりたいよね。でもそれって危険な状態だと思う。紙一重だよ。居心地の悪さとか痛みって致命傷とか流血に気づくためのものでそれがあるからこそ早めの手当や対処が可能なんでしょう。なので気づかないふりは一番うそだよ。きみにしか聞こえないのだからそれを無視するのは、うそ。めんどうだなんて言ってもそれもまた、うそ。こわいんだよ。でも無視したらだめだ。怖くてもちゃんと、それをきくんだよ。

3+

no.349

でも好きだよって言えなくて分裂する音楽を好きでもないイヤフォンで聴いていた。心にあるものは本当はもらいものばかりで、だけどもとから自分のもんって言い張ることもきた。だって誰も気にしていないよ、そんなこと。もみくちゃにされて死にたいって思いつかなければ天才を脱落して、そうなったら夢でしか会えない。悪い魔法にばっかかんたんにひっかかって十七を狂ったように繰り返していたきみの。テープはいつも明ける前で途切れる。だからその群青は明けることがないと同時に褪せることがない。朽ちるほうが幸せだって言えるのは成功者の戯言だよ。余裕だよね。もうそこへの梯子ははずしてしまったんでしょう。うまく生きられないのに肺が呼吸するし心臓はけなげに動き続けるんだよ。忠実な臓器を裏切ることは嫌だ、嫌だ、ほんとうはとても嫌だ。それにだけは騙されてこなかったから。平気なふりが続けられなくなりそうになると左手首のかさぶたが猫の声で鳴く。にゃあん。きみはぼくの話を聞いても気のせいだよって言わない。そのことだけであと一晩はここを逃げ出さない決意ができるんだよ。きみが理性の期待できない獣でもね。僕らの間に檻はないのに。きみが何も考えていない子どもでもね。ここには甘いお菓子なんてないのに。

2+

【小説】ゆきのこども

夜を一針ずつ縫っていく
これがぼくの仕事
朝になるとぐうぐう眠る
右手の指は藍色に染まってる

次に目覚めたら探そう
これはきみが生まれた夜

お母さんはたっぷり泣いたあと
きみのことをじっと見下ろし
その一度に一生分の愛を込め
雪の中に置き去りにした

きみがこの世で最初に見たものは
自分に向かって降りかかる雪だった
それは誕生してすぐに
ばらばらになったきみの兄弟姉妹

この世界はね
かなしいの
みんなが私たちを見て
きれいだねって言い合うくらい

だからすぐ溶けてしまう
ようにしているの
そんなわけないじゃない
そんなわけないじゃない

きみは雪の声を聴くことができた
それはまだ誰も獲得していない能力で
もしそのまま少年になることができて
望むのならばどんな人の子にだってなれた

数日後きみは歩き出した
野犬がきみを襲おうとしたので
雪の言葉で文句を言った
雪は神さまのものだから野犬は消えた

きみは五歳ではじめて人間に会った
それは知らない言葉で喜びを表現した
男は有名な学者で
きみを街へ持ち帰った

きみにはあたたかな
ベッドとスープがあった
ミルクとフォークがあった
本とソファーがあった

きみの前歯がぐらぐらし始めた頃
きみのお父さんが逮捕された
ある場所からこどもの死体が
いくつもいくつも発見されて

きみは被害者として
保護されそうになった
だからきみは逃げた
逃げる場所はあの森しかない

ベッドを知ったきみに洞穴で眠ることはできない
ミルクを知ったきみに川の水をすくって飲むことはできない
フォークを知ったきみに獣を仕留めることはできない
本を知ったきみに雪の声は聞こえない

そんなわけないじゃない
そんなわけないじゃない

雪はきみを覚えていた
冬のある日ある地域では雪がおかしな動きをした
天から地ではなくて地から天へ降ったのだ
それはきみを軽々と持ち上げて空高く連れてった

きみはもう見えない
木苺が見ていたのに
きみはもうここにいない
冬眠のくまだって春を待つのに

ニュースが流れ
きみは忘れるための儀式にかけられる
独房の男だけがきみを少し思い出した
長い拷問の果てに夢を見ながら

こんな夜でも一針
あんな夜でも一針
ひとりの夜は一針に過ぎない

それ以上になることがない
それ以下になることもない

きみがここへ来てぼくを手伝うのなら
かわりにぼくが行って見てこよう

きみが会えなかったお母さん
きみを守れなかったお父さん
きみに巡り合わなかった初恋の人
きみを知るよしもない未来の伴侶

そうだ、
なんならお気に入りの本をお土産にしよう
あの学者の本棚にあるものにはすべて
何度か目を通しているんだろう?
なあ、何がいい?


……
………

困ったな
無視しながら泣くなよ
いや、泣いていい
泣いていいんだ
今夜は地上で雪を見られる
ぼくにとって生まれて初めてのことだ

6+

no.348

ラストパスの輝きに憧れて、空気中の水分が凍る。ぼくの手から逃れた毛糸玉が、坂道を転がっていく。追いかけもせず好きにさせておけば運命のひとを教えてくれるだろう。ままならないハプニングだっていいものだ。なぜってそもそも支配なんてできていないから。自分で考えたように感じているだけで、お天道様はすべてお見通しだって言うんだろう。それならそれでいい。もしそうならそれもいい。机からはみ出したシャーペンの芯、スケッチブックから飛び出した曲線、フライパンから出発した双子の目玉焼き、鳥かごを脱出した誰かの青い鳥。二度と見つからなくたってゲームが終わらなくたってぼくはひとりでも笑うことができる。神様みたいだとか天才だとか欲しいと思ったもの欲しいままにして、だからって飽きずに絶望もせずにいつまでも新鮮な気持ちでわくわく目を輝かせていられる。蛇口をしめるようにして世界中の流血を減らせるし銃身からマーブルチョコをあふれて止まらなくすることだってできる。きみが不可能だといえば言うほど、あなたが無理だと笑えば笑うほど、ぼくはそれを実現する能力に恵まれる。空中に霧散するマリア、まぶたの裏に百合ばかりの棺をつくってあげよう。法則を捕まえたら黒猫は何度でも息を吹き返すだろう、それをぼくが忘れない限り。愛に終わりはない、恋に偶然はない。ママレードの粘度で切り離されたおまえの朝と夜を今またくっつけてあげるからね。

2+

no.347

ありきたりな文字を肺に詰め、ありきたりな言葉を創作している。いつまでもとどまらないものを吐き出し続ける僕を、霧の向こうからいつかの僕が見ていた。その景色が今僕の中に形作られ、体験が思い出になる。そのせいですっぽり抜け落ちてしまったものもあるんだろうが、思い出せないなら哀しくはならない。機械的な反芻と目の前の現実。あなたを好きでよかったと言われたい。中身が何度入れ替わっても思いが帰る場所は変わらない。それを隠すために変化を続けてカムフラージュしているんだろう。望めば手に入った時代、何かに飽きることはなかった。誰かにとって都合のいい存在になることは、僕だけの秘密を持てるということ。軽視してはいけない。唇が水と空気を欲しがっている。誰もそれを持ち合わせていない。夢は今もどこかにある。訊ね方を間違えなければ、もう何も失うものはない。

4+

no.346

朝が来て橙をひけらかす
乾いた涙の行方は頬も知らない

きみに、
きみに生きていて欲しくない。

白い鳩が目線の先を旋回する
繰り返しに怯えない魂は
逸脱するたびに蘇生させられる
命の貴重性は本当の理由にならない

冷めた目に映した世界で
きみの叫ぶ理由なんかほとんどないんだ
意味の作成と再生産
盗作されてレプリカが輝くだけ

半分ずつ引き上げられる音階
美しいなんて言わないで
ぼくには見えなかったもの
そのために生きようとしないで

陽は沈む
夜は分断される
道は続く
祈りはつながる

それだけを覚えていて
それ以上でぼくを満たさないで

2+

no.345

心がいっぱいになりそうな時、ぼくはいつもまぶたを閉じるようにしている。そうして自分をちいさなコップにしてしまう。好きなものでも嫌いなものでも多過ぎるとあふれちゃうんだ。ぼくはどこまでもひろがる無限の宇宙じゃなくてほんのひとり分の庭だから、手入れのできる数の花にしか咲き誇れよとは言えない。たまに垣根越しに大きな瞳がこっちを見ながらよぎることもある。彼には彼の庭があるんだろう。そしてそれはぼくのものより大きいかも知れない。きっとそうなんだろう。だけど彼にだって限界はあるはずでそれをちゃんと守っているはずなんだ。甘いまやかしはマカロンみたいな多重構造でぼくたちの大切にしている思い出を脅かそうとするんだけどちゃんと戦略を立てて挑みたい。蝶々に姿を変えられたあの巡査が木陰で休んでいる。羨ましい日もあるよ。あなたの生きた時代をぼくは知らない。あなたの声が、耳に残っているだけ。あなたに流れた血が、ぼくの内側にも流れているだけ。愛なんて知りたくなかった。それにまだ名前がついていないあいだ、どれほどぼくは自由だったろう。考えても仕方がないことだけれど。終わりさえ飲み込んだ夜が始まる。迷子のかざすランプだけがこの世の光だ。誰もどこにもたどり着かないという公平が朝の出番を遅らせる、これからは長い夜だ。

2+