2017年 10月 の投稿一覧

no.313

何の変哲も無い窓から見ている
世界の終わりと変わらない人間関係
灰色の雨が街の色を洗い流していく
横断歩道を待つ人がちぐはぐに眩しそうな顔をする

星は互い違いに流れてトタン屋根は光っている
今と昔が混在しながら空気に溶けていく
ふいにロリポップキャンディが気にかかる
いちご味なんだけどぼくはいちごを見たことがないから

たぶん誰も知らなかっただろう
予測できないのは独裁者が存在しなかったからだ
動くスピーカーが安全を唱えながら下校中の生徒を跳ねた
誰も泣かないと知って葬いは行われる

ぼくはそれでも好きだった
参列者の視線が戸惑うように動いて急に落ち着くところや
ふと思い出したように溢れてくる涙
時差があっていつの、誰のために出たものか分からなくても

命の大切さを思いながら昨日殺された命を食べる
濃い色のソースはどんな料理にもよく合って
(いちご味はいつのまにか消えていた)
ぼくは身分をわきまえずシェフを手招いた
みんなが眉をひそめる前でそいつの舌に料理を移した

1+

no.312

君がどうして幸せになる道を選ばなかったのか僕には理解ができない。わざわざ茨の生い茂る道に分け入って、微かだけど鋭い棘にやわらかな皮膚を裂かれて、それでちっともめげることなく平気でいるのは。君にとっての使命はもしかしたら違うところにあるのかも知れないのに。草叢に落とされたハートのエースを拾い上げて、もとどおりにつなぎ合わせるでもなく、このままでも悪くないねとまで言えるのに。水脈のありかなんて誰にもわからない、だとしたってここにはこれだけの緑が生息しているのだから他でも良いだろうに。夜になればカンテラひとつあるだけの心細い庭園。少しだけ勇気を出したなら君の横顔をスクリーンに映写されたもののように見つめてみる。どうしてだろう。なぜ僕だったんだろう。そんなことを繰り返し考えていたら形を失う心地がする。僕が僕でなくなっていくような。そうすると決まって、なんだ泣いたりなんかして、って、君の指がじかに触れる。サーチライトの輝きはない、この淡い発光を守るために闇があった。どんな前触れにも汚せない時間が、標本箱に守られずとも、いつまでもここにあった。

4+

no.311

きれいなものは
ぜんぶ
ぜんぶ、あなたにあげる

よごれていないところは
あかるいところは
つぎがあるところは

それをつかったあなたが
もしもぼくいがいを
だいじにするのだとしても

おとぎばなしにならなくても
どこにものこらなくても
あなたがぼくをわすれても

あしたもきっとのぼるたいよう
ねこのようにきまぐれでいいのに
りちぎなやつ、ほんとうにあきれる

2+

no.310

新しい脱出ゲーム/きみを傷つけなくても生きていけるくらい強くなりたい/傷つくきみを見たくないから殺してしまいたい

濡れた線路の上を電車が走っていく

たくさんのものが共存していながらいずれ収まるべきところに収まっていく様子をもう見たくない/そのたびに僕は敏感になって魂は炎症を起こしていた/平気な顔も強気なふりも無理矢理だって分かってる

覗き込まれた液晶画面に何もないことを知られたくなくて隠し続ける

真珠のような声が叫ぶほどの強さではなく骨を静かに圧迫している/流れてもいない血を見せびらかすことはできない/だから黙って睨んでいた/虫が悶える大地の一角を

それがすべてだと主張する相手もいまだ見つけられずに

2+

no.309

きっと世間は冷たいだろう
君はこれからいくつも嫌な思いをして
人間不信にさえ陥るだろう
誰かを殺したいほど憎んだり
死んでしまいたいほどさみしかったり
自棄になって物を壊したり何かを奪ったり
それでも生きていかねばならなくて
激しい絶望そして憤りを覚えるだろう
神さまのいない国で生まれ育ったから
祟りを恐れず暴れるし
禁忌の意味はいくつになっても分からない
覚えておいてほしいのは
何も君を守り幸せにするために存在しないこと
ひとりで歩いて行かなきゃならないこと
そんなことないさと誰かが囁くだろう
だけど、ほんとうに?と疑うことを忘れないで
子ヤギを食べたいオオカミは何をした?
そう、優しい声で近づいたんだ
大切な何かを隠すとき他人は優しくなるよ
君は誰にも見守られていないし
その行いが誰かを苦しめはしないし
愛することをやめたからって困らないし
また新しい愛を見つけるだけだし
死亡記事だって誰かを輝かせるよ
たとえば、と話し出すこと
もしかしたら、から始めること
耳をふさぐことで命は始まりの音を聞く
君は君の良心からだって自由だ
居心地が悪いならいつだってその船を覆せるんだ

3+

82(honey)

画像に文字入れするの楽しい…。

2+

no.308

インスタのために猫を飼った

そいつは自分が高貴な家柄の出でもあるように
おれを見下してくる
だから仕方なしに付き合う
素材のための命とそれにふりまわされる命は互角

今朝のフルーツグラノーラは妙に濃い味がする
昔の恋人が薬品を混ぜていったかと思った
誤解であっても二度と会うことはないのだから構わない
解かれない謎は見つけられていない謎に等しい
だからそのまま放置されて百年後に開封されたりする

猫はひなたぼっこもせず西向きの窓辺から民衆を見ている
百年前そこは本当におまえの領土だったかもしれない
おれはおまえの臣下だったかもしれない

新しい妄想は桃色の毛皮より楽しいから出歩く必要はない
また古くなるまでは一緒にいような
まるで生まれ変わることがあるみたいに来世を約束しような

戯言をぬかすなとでも言うようにしっぽが頬を往復でビンタする
テーブルの上の皿が割れて千年の呪いが秋の空にとけていった

2+

no.307

かわいそうって思っていたおとなたちも単に夢を見ていてこどもたちの攻撃なんてちっとも効いちゃいなかった。口を開くためにはくわえたカミソリを落とせばいいだけだって気づくひとは案外と少ない。あたらしい国は青くて何も疑わなければそれなりに平和だった。かがやきを集めれば有名にだってなれたし誰かを幸せにする方法は惜しげもなく共有されそこらじゅうに散らばっていた。どういうことかっていうとたぶん誰も幸せになりたくなかったんだ。いちばん分かりやすい自己紹介は抱えている絶望だからそれを手軽に名刺のように差し出したかったんだ。攻撃しないでください。敵ではありません。あなたはわたしをそっとしておいてください。どうぞお気になさらず。ひとりになりたくてほどほどの壁を立てるんだけどその模様にひかれた他人が勘違いして寄ってきて話しかけたりするから不機嫌な茶会なんかひらかなくてはいけなかった。童話の世界にあこがれるのはそこに終わりがないからで結末をつけられることが面倒だというのもあった。それっきりになれば良いのにずるずる続くし評価を受ける。気にしないくらいなら始めから繋がらなければいいのにって思うしわがままだって言われても綺麗だと感じるものをだけ取り込んで生きていきたかった。そんな無菌室みたいな空間がお望みなら死ぬしかないよって笑う君がまぶしくて本当にそうだよねって頷いてこの冬を一緒に暮らすことができればどんなにか再生可能な記憶になるんだろう。そう言うと気色悪いって言うから本当にそうだよねって頷く。ほんとそうだよ、分かってる。

1+

no.295

no.295さいきん評判良かったので!
広告っぽく?してみた。

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