2017年 6月 の投稿一覧

no.240

浸るのが怖い
だったら星を決めてしまえば簡単だ
まやかしだって偽物だって
それを信じてるって公言すれば

理解されなくてい
どんな感情も汚されたくないと
言うのなら生きていけない
そんな極論で貶めることの容易さが
癖になってしまわないうちに

本音はきみになりたい
他でなくきみがいい
初めて思ったことを告白するよ

それは見方によっては希望で
ぼくの死なない理由にもなるだろう

そう信じてるって公言すれば
これがまやかしだって偽物だって
言えることもあるんだろう
救われたりもするんだろう

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no.239

言葉にできないものを全部あいしてるに詰め込んでしまうから苦しくなるんだ、本当は見えているから。すべてを奪って一旦無力にしたらいつかぼくをときめかせたものみたいになるんだ。天国も痛いも通り越えて誰にも会えない場所で新しく王国をつくろう。その時には紫やピンクや水色の粘土であそんだ、楽しかった気持ちのまんまで、ひとつずつ大切に忘れていこう。きみの目の中に懐かしいきらきらが映っても、その正体はもう追わない。嫌いなものも拒まずそばに置いておく。そのまま気づかないふりをする。好きなものだって。他に何も知らない素振りでいれば敵機は落ちないし、花畑の花はひとつも枯れないんだよ。

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no.238

迷宮に住まう怪物の愛よりも
その醜さが深く刻まれていたとは
ほとほと理解ができない
いや、したくない
君はそんなに正しいことを望むか?
そんなにそれは魅力的なことだろうか?
すべては物語を構成するための
いじらしい誇張と虚栄であって
それがなくてはどんな仮定も
一瞬だって生きないのだとしても?
たまには誰かの下手な作りものを
好きになる努力くらいしてみることだ
どこへも声が届かないと嘆く前に
誰にもわかってもらえないと嘯く前に

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no.237

何もないこの世から抜け出す最後の方法。きみの試した最大の失敗作。代替ばかりの部屋であの子はいつまでも入れ替わらなかった、そのせいで老化した、そして誰よりも伝説になった。夢は海の底にあると信じてからっぽな体を持て余す人魚たち。宝石はすべて乱反射の残像。ここにしかないものを探すから檻は狭くなる。たったひとつになれるなんて幻想をやめてしまわない限り。傷ついたくらい、なんだ。傷つけたとしたって、それがどうしたっていうんだ。きみは泡のように無数に撫でていくこと。僕の持て余す体を、あの子の空想の心臓を。

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no.236

きれいに澄んでいくきみを見ていられないのは、きみだけはいつまでも僕に訴えないでほしいからかもしれない。遠いちいさな街で誰といますか。天気はいいですか。新しい猫がいますか。その子をなんと名づけますか。たまに昔話をしますか。そのお話の中で僕はどんな役割になるのでしょう。少しでも言い淀んでくれたらと思うけどそうならないきみを知っている。もし躊躇うならもうほとんど知らない一人になったんだ。僕たち美しかったね。あの夏、あの日々、起こることすべて悲劇になっちゃって。潰れた檸檬、多角形のグラス、保護された卒業写真。あの時にはあの時の。今には今の幸せがちゃんとあるってのに。太陽と月の鎖で結ばれて眠る。どちらが寝返っても引きずられますように。幻であってもそのことが変わりませんように。

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no.235

僕が食い入るように読んだあの言葉は、今、どこだろう。もしかすると僕しか知らないのではないかと思わせる密やかな場所は。あなたは今はもう忘れただろうか。それとも覚えていながら、忘れようと試みては何度か敗れただろうか。あなたの生み出したものは、もうどこにもない国をどこまでも存続させるような狂気めいた信念があった。それに傷ついた人もあっただろう。僕も気づいていないだけでもしくは気づかないようにしているおかげで、だけどほんとうはそんなふうに一方的に被害者意識を抱えたうちの一人かも知れない。心に留め置く必要があった。あなたはあなたの気持ちだけでいつでも旅立つのことのできる人であったこと。そうと悟られず捨て去ることのできる人であったこと。例外なく誰もがそうであるように。ああ、記憶だけが僕をだまそうとする。事実はこんなにも明らかなのに。あなたにとっての僕が、僕にとってのあなたのような存在になれていたらきっとどちらかは救われたのに。

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no.234

同じ場所、違う顔ぶれ
綺麗だったものがもう見えない
誰に生きていて欲しかった?
ほんとうは
両手で作った箱の中で
いつまでも培養されていた鮮やかが
今になって僕たちを見放そうとする
逃げ出すものを確保しようと
緑が広がりながら強く輝く
大切にしすぎて使えなかった
最後の一枚、折り紙のような輝きのさ
(反発なんかせずに祈りに使うべきだった)
逃げ出すたびに聴こえていた音楽
耳をふさぐほど大きくなって
だけど夢の中まで助けてくれない
いつだってそう、
こんな僕たちを解放するものは
清く明るい希望なんかじゃないんだ

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no.233

ごめんと君は言ったけどそんな罠なら張らない方がマシ。そんなことにも気づかないなんて、まだまだ余すところばかりだ。揃わない鼓動に足並み。そんなことに不安を感じたりしない。好きなものは選べない。ただ、自分が何を好きかに気づいたときにそれを全身全霊で愛せるというだけ。何を好きになるか。誰を忘れられないか。思い通りにならないのは、つまりそこだけ。ただ、それだけ。それ以外については、伝え方も、思い方も、自由にできないものは何一つない。それでも嘘つきゲームを続けるのか。かわいいひと。とても、かわいいひと。

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no.232

君の秘密が露呈したとき僕は星が光り始めるのを見ていた。それは何かの芽のように背景を穿って、だけどすべてを覆い尽くすなんてことはしないで、自分たちが一番目立つような配分で存在できるよう弁えていた。その一つ一つがただの反射でそれ以上でも以下でもないと思えた時に子どもではなくなったと感じたけど戻りたいとは思わない。寄せるさざ波が確実にまた引いていくように当然のことだった。あの夜はどうか。暗い部屋で、だけど完全ではない闇の中で、君は満足したのか。白い塊を抱いて、何を睨んでいたのか。それとも笑っていたのか。もしも僕の方がおかしいんだとしたらどんな推察も憶測でしかないね。たとえば君が嘘をついていた、とか。そもそも君は実在したのか、とか。それでも誰かの微笑を引き出せていたら良い。僕のでたらめが、空想が、虚言が。それは、それこそは、滴り落ちそうな星の光より尊く映るから。もしも無謀な墜落だとしてもそういうことなら許せるんだ。

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no.231

僕が育てていた花を摘んで一輪ずつ窓辺に飾ること。それは良い香りをさせるだけで何も語らない。そのことが君を饒舌にする。聞き役のいない密室で反響した言葉はガラス玉になって一瞬で砕け散る。それを拾い集めて新しく台詞にする生き物はない、ただ、砕け散る。君は言う。あなたは何のために殺されたのだ?生きていかなければならなかったのに。花は重力に耐えかねてこうべを垂れる。逃げ出すように。反芻する。共鳴するもののない場所で。あなたは、何のために、殺されたのだ?時に大袈裟に。時に慎ましく。時に派手に。あなたは、何のために?必ず最後には同じ解にたどり着いて崩折れる。その時までずっと。もう枯れるものはない。もう責めるものもない。事実だけが逃げ出しもせず無愛想に横たわっている。君の手で殺されれば誰も苦しまなかったのか。考えることには意味がない。あるとすれば時間潰し。そう、これが君の夜の乗り越え方のすべて。ひとつも間違っちゃないと思うよ。

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