no.167

貧相な青と白。強欲が逃げて行くよ。僕の中はそんなんじゃないんだ。無い傷を隠しているだけ。さらけ出す秘密も音楽もなかった。月の下で凶悪犯は眠りに落ちる。丸い尻尾を隠して。読めない文字に包まれて顔も知らない親の名前を呼んで。人工的なランプが君の顔を描き出すけど白昼の下での答え合わせは叶わない。伝わることに重きを置いた表現を卑下して何も残らない雑踏。贅沢に無為にしている。何もしないまますべてを手に入れながら、いっそ噛み締めながら。たくさんの同情と憐憫が僕たちを包んで今ここは他のどの家の暖炉よりあたたかいよ。

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no.166

生きていけるの
きみは生きていけるの
赤が冷たく滲んであったかいよ
戻れない場所だけ輝くから何も見えない
存在する光の量は決まっていてきみがそれを奪うから
どんな夜道でも迷いはしない
きみからの逃げ道をみつけだすこと
両手を広げたその一瞬だけ、二人は本当に飛べた気がした

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no.165

プライドがある。ぼくには誰にも奪えないものがある。それについて誰かに褒めてもらいたいだとか認めてもらいたいだなんて考えはなかった。結局はぼくのもとにありつづけるものだし他者のどんな行為によっても辱めを受けない性質であることをずっと知っているから。寒い冬に氷を食べるきみがすきだよ。きみが、すきだ。あたらしい日になってもきみの背中に羽の生えないおかげでぼくは生きていける。きみの不自由で呪いたい世界で祝福を受けて。ときにひどく妬まれて。満開の花は雨より長く雪より儚い。埋もれないおかげでいつまでも柔らかな感触に叩かれつづけることができる。手首に巣食う縫合跡が叫びたがってまた真っ赤な傷口を開くけど、何も誰もまともでないという、その印象ばかりが光となって、永遠に、病んだ心の中でさえ淡く素直に照らし続けるんだよ。照らし続けるんだ。

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