no.43

待つ余裕は無い
ぼくたちのほうが
まちがっていると世界が
そう言わなくなるまで

新しい夜
繰り返す朝
いつか見た夕陽
息が止まりそうな
異質たちの変わり目

繊細に象られて恨めしい
粗野で醜くないことの代償
鑑賞されて批評をされて
それでもたまに世界が輝くのは

きみがいることにのみ起因すると
それ以外に理由は無いんだと
これから先もずっと信じていたい
離れてゆくばかりの夏の一日
誰の手を握ってもきみの名前を呼びそう

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no.42

きみなら知っている
針金に血を通わせる方法を
暴力で人を安心させたり
繊細な神経から逃れる術を

真新しさは残っていない
語りかけても返事は来ない
駆け出してから何年も経った光が
間違った名前を照らすだけの夜

誰かの大切なものを壊したいと
それでずっと忘れられたくないと
もう他に方法のないことを
知るつもりはないままわかっていた

月を乗せた船が海を離れ
彗星の航路が宇宙を彷徨い
巨大な観覧車の流れに乗る頃
ネオンを知らない地下鉄で目を覚ます

ハンカチのかぶせられたそれを
座席に置き去りにされたそれを
明らかにする気分ではまだない
いつになってもなれないよ

小鳥の心臓に銃弾が入ってあります
目の前に倒さねばならない敵がいます
小鳥は唯一の肉親でぼく以外です
空っぽの銃だけがぼくの手持ちです

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no.41

通勤途中のバスの中で。白杖を持った人へ座席を譲るときにかけた言葉があれでよかったのかどうかを、朝と夜を何度か繰り返し終えてもまだ考えている。そのくせ毎日顔をあわせる人間に対してはかけらの遠慮もないということ。だけどこの矛盾を排除したらきっと、人間らしさが一番に損なわれるんだろう。僕にとっての。

いつだってそう。いつだってそう。あなたはやがて僕の知らないところで僕の知らないひとを傷つけるんだ。そして僕の知らない方法で僕の知らないあなたで仲直りをするんだ。それだけが許されるというあの子と、それだけが許されない僕と、どうしたって一度は秤にかけてしまうよね、かけたっていいよね。だからって何かに生まれ変わりたいわけじゃない。ただ誰にも知られず、あなたにだって気付かれず、僕を産まれなかったことにしたいだけ。一度も。完璧に。

美しいものはたくさんあったし、今もあるよ。数え上げたらきりがないほど憧れたことも、たくさん。幸せか不幸せで言ったら断然に僕は幸せで恵まれていた。だからこそ釣り合わせたいのかもしれないな。うまく伝わらないことは分かっていて、あなたは誤解したままいられるほど理解力がないわけではないから余計に僕の滅裂に気づいて反論せずにはいられないと思うな。

大丈夫だ。あなたは慰められる。どちらかといえば僕のほうがおかしいのだから、あなたは援護される。それをまた気分が悪いと思うかも知れないけれど、あなたには瑕疵が必要なんだ。僕は不在になることを自分の意思で選ぶ。あなたは僕の不在に何ら手を打てなかった。すべてが手遅れだった。それで釣り合うんだ、互いに。弔いは望まない。死ぬまでかかる忘却のために、僕たちは出会った。そう、言わせたいんだ。僕より先に。あなたに。

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no.40

優しさは絶対に凶器
僕は悪意よりはるかに
好意のほうに怯えている
甘やかした罪悪感が
ずっと幅を利かせているせい

ありがとうと言えない
言わないんだ
かわいげのない決断
正しい子どもでごめんなさい
付け入る隙が無いままでいることも

お気に入りから遠ざかり
身の破滅をしずしず願う
それで許されると言って
それで許されると知って

季節と信号だけが確実に
神様の微熱と天気とを反映させる
時計台に羅針盤
いつか尽きる脆さだけ救いだよ

今夜もまた同じ
知り尽くした回転
螺子式の当然
誰かが誰かを愛しはじめる
誰かが誰かを殺しはじめる

知りたがるから教えたんだ
一度ならず言ったはず
僕は傷つけかたを知らない
過不足などあるはずはないのに
あなたは僕をそんな目で見る

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no.39

暗闇より深い
濁りのない透明のなかで
終わりより唐突な
途方もない始まりのときに

ぼくが変わって違うものになったら
ぼくは捨てられると知ると思ったんだ

記憶の再生は追いつかない
妄想でさみしく補填する
この星のどこかで救われなかった
ぼくはまだ不束に抱えている

捨てるべきだ
握るために
手放すべきだ
掴むために

そのすべて吹っ切って
そのすべて貫いて
そのすべて打ち砕いて
そのすべてに告ぐ

きみは誰だ
おまえは僕だ
僕はあなただ
あなたは僕たちだ

逃げ切れなった
逃げなかった
変われなかった
裏切らなかった
後付けの約束
退廃した真心

生まれ変わらない僕を
まだ知らない
あなたにずっと
そそぐためだけに巻き戻された歌

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