no.38

きみはぼくなどに侮られていてはいけない
大切なことは先頭に持ってこないといけない
策略に長けたものに添削をさせてはいけない
誰かの価値観に引っ張られてはいけない
不器用を誇ってはいけない
傷つくことを恐れてはいけない
という言葉に怯んではいけない
傷つくことを恐れてはいけない
という言葉の正しさにだけは傷つく必要はない
彼らはきみを支えてくれはしない
すべてを否定した後になお残るものを数える
きみは知るだろう
必ず知るだろう

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no.37

陳列された優しさを選び損ねて烙印を押される
誰も愛せない体と頭でいるせいで遠巻きに眺められる
それを素直に表したばかりに人間扱いを止められる
僕が本当に大切にしたかったものは君にとって単なる食糧で
しかもそれは必ずしも必須ではないということがそもそもの不幸だった
何も言わず従うことの恐ろしさを忘れないでいてよ
頬や二の腕に浮かび上がる波紋はあの日からだ
いつかきっと君は僕を笑うかもしれないと知ったあの時からだ

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no.36

嫌いなものを増やしたくない
好きなものを減らしたくない
閉じこもって狙い撃ち
紐に育った糸を持て余し

血を浴びよう
波に乗るように
白骨に触れよう
朝を迎えるように

皮膚が伝える
ものを信じられるかを
賭けよう
言葉を飲み込んで

たとえば薬指を
賭けよう
文字は使わず
いちばんの沈黙のなかで

伝えたい
それがいけない
分かり合いたい
それを願うと壊れる

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no.36

命にかえてでも守りたいものが
僕を世界から孤立させる
言葉にすれば嘘だらけで
沈黙も味方してくれない
好意は誤解され
捨て身は敗れ去る
波は打ち砕かれながら
何度も寄せる
笑い声を内包する潮騒で
いつだって死に場所を携えて
白骨は八月の雲の色
あいかわらずどこまでも
自分にもあるものだと確認したい
何もないままどこかへ去って行きたい
姿を変えてまた生を始めよう
君の手から放たれたら夢に見た放物線

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no.35

僕は死んだ
あなたの好意のなかで

水滴に滲んだ街灯のオレンジ
ちいさな放射状に看取られ

たくさんの祖先
まだみない子孫

叶わなかった明日
ふいにした今日
懐かしがった昨日

返事をしなかった手紙
壊れたままの換気扇
干しっぱなしの洗濯物

萎んだ蕾
乾いた洗面所
買って履かないスニーカー

遺書もなく
予兆もなく
憶測も許さず

こんなにたくさんを残して
これほどの贅沢のなか
僕は死んだ
孤独なあなたの優しい好意のなか

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no.34

噴水を浴びて笑う子ども
僕にもあったな
誰かの特別だった頃が
緑に覆いきれない灼熱
このまま溶かそうとするんだ
時間を
気持ちを
隣人同士を
信じたって裏切るよ
それは裏切るよ
背中に今も傷がある
僕はそこから
流れ出したものばかりを数えて
あなたはそこから
注ぎこめるものがあることを僕に教える

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no.33

覆った目に
映り続けていたもの
塞いだ耳から
流れ込んでいたもの
鮮やかに優しい景色
ずっとやまない音楽
なだらかな曲線
打ち寄せる潮の香り
ぼくが忘れたくらいで
消えてなくなる魔法じゃない
百年より長い一年
一世紀より長い一秒を
ずっとひとりで生きてきた
きみと共にただ生きるため

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no.32

重ねた言葉を
嘘だねと一蹴される
誰がつきたくてつくもんか
近づこうとして遠ざかっただけ
あなたはいい
ぼくとは分離できる生き物だから
ばらばらで遠ざかってもいい
もっともらしい真実は装飾
知らなければよかった
なんて言うのは
惨めを通り越すほど
足掻いた後でもいい
まっすぐにとか
ひたむきにとか
そんな修飾のいらないくらい
今日と隔たる昨日と明日のはざま

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