てのひらに心臓を出したら
夕陽に透かして眺めるんだ
神さまっていつも
きみの姿で現れるから
ついた嘘の数
答えなかった問い
暴いた秘密
優しくできなかったこと
どちらを向いても苦しいのなら
いっそ空に溶けたいと思う
そんなことは絶対にできず
だから夢に見るだけなんだけど
たどたどしい筆跡
誰でもふたりを笑っていい
だけど達することはできない
僕らは決まってひとつにほど近い
てのひらに心臓を出したら
夕陽に透かして眺めるんだ
神さまっていつも
きみの姿で現れるから
ついた嘘の数
答えなかった問い
暴いた秘密
優しくできなかったこと
どちらを向いても苦しいのなら
いっそ空に溶けたいと思う
そんなことは絶対にできず
だから夢に見るだけなんだけど
たどたどしい筆跡
誰でもふたりを笑っていい
だけど達することはできない
僕らは決まってひとつにほど近い
私たちの壊さなかった幻が
夢が
美しいばかりのものが
誰かをこんなふうに追い詰めていた
四角形ばかり見当たる部屋で
過去を手繰り寄せることのできる
何色かもわからない糸をさがした
小指に結びつけたくて
優しい日々はどんどん遠ざかる
きみは愛される
きみはかわいがられる
置き去りにされている自覚もないまま
分かりあおうとするから傷がつく
離れようとするから体が冷たい
分かりあえないまま
ふたりはふたりのまま
それ以上の朝は無く、それ以上の夜も無い
いつまでも捨てられないほうがわるいんだって、そんなこと言いたくない。ほんとうは、ほんとうに、言いたくない。きみが見抜けなかった僕は明日とそれに続く次のすべてを欺いた。ときたま壊していないとおかしくなりそうになる。土の中に眠らせても、凍らせても、いつのまにか芽吹いてしまう種みたいにさ。離れ離れにしても、仲違いさせても、やがて巡り合ってしまう生き物みたいにさ。どちらがどちらを置き去りにするか、未明のせつない話し合い。暗号がじょじょに隔てて、さいごには眼差しだけが残る。それも消え去って思いだけが信じられる拠り所になる。虹色の夕立ち。みんなが、捨てるように忘れていった幼年時代が溶け込んでいるせいだよ。
好きなものは好きなままでいい
変えられないものは変えなくてもいい
本当は終えたくないものを卒業したり
人に隠したい秘密を暴露する必要も無い
きみが嫌いなきみのすべてを
誰が認めなくても捨てられないなら僕が守る
恋や愛をしろって神様が諭すような休前日
人間になることに怯えなくていいけれど
もし怯えたんだとしても
まるごと包んで抱きしめるから
わかっている
幸せになれた
いつだって
もう
幸せにならない
なろうとしない
自分を僕は好きだった
なってしまった
手に入らない
だけど眺めている
追いかけている
僕をずっと好きだった
日を経て鮮やかになる青
薄れていく記憶
消される人影
遠い、近い、空のつなぎ目
新しく生まれ変わるときに脱いだ殻に夏が溜まる。余計なことを言わずただ微笑む金曜日の雑踏。甘い蜜のありか。もう二度と出会うことも話すこともないひとと、行き違ってすれ違う。誰かにとって正しいことが僕にとってそうではないことを、誰も教えてくれなかったけどきみだけは囁いてくれた。なまぬるい風の中で突然に泣き出すときのえもいわれぬ快感。砂糖漬けの花びらが舌から溢れて踏みにじられていく。次々に生まれて次々に狂っていけ。いつか何も欲しくなくなる時がくるから、摩天楼に向かって許してって乞え。死なせないでほしい殺してほしい。いくつもの目と目が同じことを訴える。一括りにされないよう馬鹿をする。ひとまとめにされるやるせなさで発光する。失っていくものの数だけがふたりの寿命。きみをこの世に産んだ人が僕のいちばん好きな人だよ。覚えておいて、けして忘れはしないで。
休前日の夜
何かに許されたい
ぬいぐるみは家出した
自分でしなければならない
これからは何もかも
いつか簡単に消えてしまって
思い出も信じてもらえない
おとぎばなしと変わらない
不自由な手
一滴もこぼせなかった
立ち向かっていいのですか
落ちていい恋ですか
我を失って
溺れてもいいような?
窓ガラスに頬をあてて
どちらがあたたかいかを考える
降り出した雨は斜めに向かって
絶対に安全な僕を叩く
もっと綺麗なものになりたかった
だけどからだは暗い隅っこを好んだ
そこにいるかもしれない光を見ていた
まだ見えないものを間近で見ようとして
永遠に落ちない星を落とそうとして
指先から生まれるものはいつも不安だった
誰が何と言おうと少なくとも僕には、
絶対に、欠かすことはできなかった
恐ろしい形相と形容してしまうと
ほんとうに手に負えない化物になるかと思われた
だからまるで自分が産んだようにあたためた
あたためながらこうも思った
空っぽなら、空っぽなら、
これがもしも空っぽならいいのにな
誰の夢も裏切らないけれど
いつか必ず終わることだけ決まってる運命
ありふれた言葉に思いを託すことは億劫だったね
いつの時代の誰もがそうだった
正解が見つけられないのだから好きな人を褒めた
そしてそれでよかった
少しずつ溶け合って混ざって
もう二度と分離できないところで
きみが僕に思う気持ちと僕が僕にやることのできない優しさと
僕がきみに与えたい深手と
きみがきみに流し込み続けた砂糖みたいな善良を
もう少し、あと少し
つじつまの合わない世界に持って行って
誰にも管理されずどうなるか見ていたい
腐ってもいい芽吹いてもいい
そんな出来事もあるってどこかで
幸せが何かも分からない子供の口から言わせたい。
鉛筆の芯が震えている。先端で光がはじけてひとつひとつが思い出になる。ここまで繋がってきた血をないがしろにすること、それだけが自由な特権。お金にはならないこと。誰かを笑わせることにもならないこと。色彩が空を行ったり来たり。天下では発火と折檻の繰り返し。暴発。静寂との境目には頭の悪い鳥が住んでいてかなりでたらめな歌を歌う。何も証明できないことが何かを示唆する。新しい夜明けに法を犯す。真面目な目。異常を感じさせない佇まい。断水したままの浴槽。流せない体液。腐る排水管。爛れる初恋。あと何回見送ったらいっしょに行けるんだろう。挙げ句の果てに何になろう。
神さまはいない
赤い目で睨んでも
教室の床に落ちる影
見慣れない頭のかたち
背中に感じるあたたかさ
鏡の反射に誰かが笑う
人の悪意をそのまま受け止めない
世界は毛布じゃない
頬杖の内側に針と糸を隠して
名前に込められた意味を知る
誰もがいらないと言うかもしれない
誰もが同じことに怯えていたかもしれない
それは希望
それは夢
みんなが震えている
大切にする
大切にするよ
握ったらよく切れる愛だとしても
構わないまま傍にいるのでは心もとない
葉にしがみつく蝉の抜け殻
しばらく忘れていた耳鳴りが始まる
それを邪魔だとはもう思わない
静寂は体内に宿る
破られる約束でもする
裏切る指でもつなぐ
ぼくが大切にする
それ以上の手は他にないんだ