no.275

新しいものはいつも
忘れたと思っていた
ふるい記憶を呼び起こす
僕はまだ何からも
抜け出せていなくて
同じ雨に打たれている
浮かれて買った雨傘が
今の唯一の持ち物
練習を重ねれば
ますます下手に
うまくやろうとすれば
ますますぎこちなく
曇り空の真ん中で笑っている
君の名前をいつも思い出せない
誰も傷つけないなんて無理だよ
信じていないんだよ
そうやって傷つけられたことも忘れる
なりたいものがまだわからない
決定を極端に恐れている
それは他の選択肢の放棄だから
綺麗になりたいと思いながら
一方で蹴落としかたを考えている
まるごと好きだなんて言えない
通りは知った顔ばかり
違和感のないものが見当たらない
早く馴染んで埋もれたい
だけど見つけてもらいたい
潔癖症の支離滅裂
明滅するオレンジ、
何の合図にもなっていない